菩薩

オーソン・ウェルズの フェイクの菩薩のレビュー・感想・評価

4.6
すごいものを観た、いや見せられた、むしろくらった、というよりこの場合「ウェルズの魔法にかけられた」と言うのが最も正しい表現になるのかもしれません。

90分、目まぐるしいスピードで繰り出され続けるモンタージュと情報の波、それを巧みに操るストーリーテナー(であり、登場人物でもある)のウェルズ、これは果たしてドキュメンタリーなのかフィクションなのか、それこそ「フェイク」と言うのが正しい表現になるのでしょう。

贋作画家、ペテン作家、大富豪、火星人、歴史的建築、そしてパブロ・ピカソ…。様々なものを通して物事の「真実」を追求していく物語であると同時に、「芸術とは何か?」に対するウェルズの意思表示であり反抗であり自己弁護でもあり、総じて壮大な宣戦布告である様に感じました。

評論家がいるから駄作が生まれ、鑑定士がいるから偽物が生まれ、真実があるから嘘があり、嘘があるから真実がある。

とにかくめくるめく壮大なトリックの中に突然投げ込まれたような印象を受ける作品です。この迷路は一度ハマったら生涯抜け出せない様な気がします…。


よく、なんでも鑑定団なんかで「偽物ですけど、いい作品ですので床の間に飾って楽しんでください。」みたいのがあるじゃないですか?たぶん、芸術って言うのは、本来はその程度の心算でいいんでしょうね…たぶん…。
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