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ダラス・バイヤーズクラブのmomocosのレビュー・感想・評価

ダラス・バイヤーズクラブ(2013年製作の映画)
4.0
ぜひとも色眼鏡なしに観たい映画だったのでオスカー発表前日に駆け込みで鑑賞。そしてマコノヒー&ジャレッドレト、受賞おめでとうございます!

1985年のテキサス。酒と女とドラッグまみれ、気のいい友達がいて親父譲りの手先の器用さでついた天職もある。車を乗り回すのも気に入りで、ロデオという趣味もある。HIV発症(発覚)前のロン(マコノヒー)は、はたからみると退廃的で、病気じゃなくても早死にするわ!という生活だけれど、本人にとってはささやかな楽しみのある普通の人生だったのではないだろうか?

だからこそ、「いつ死んでもいいと自暴自棄で人生を大切にしていなかった男が生きることの意味に目覚める」話ではなく、「何不自由なく生きてきた人が突然目の前に死を突きつけられて、生に執念を燃やす」という風にも観れて、私たちにも届く物語になっている。

FDA(食品医薬品局)が未承認という理由で病院が処方してくれない新薬について調べたおし、会員制でそれらの薬をHIV患者たちに配るダラスバイヤーズクラブを設立する。

法の前で無力な医者たちにうんざりするなか、話のわかる女医のイヴは女としてだけでなく人間としても信頼できた人で、ロンが母親のほかにそう思えた女性は初めてだったのではないだろうか。だからこそ、かつて住んでいた家を捨てた時に唯一持っていった絵(画家である母が描いたもの)を、イヴに渡したんだと思う。

それからなんといっても同じHIV患者にしてビジネスパートナーになるジャレッド・レト演じるゲイのレイヨン(ほんっとーーーにすばらしい!!!)。化粧をしておしゃれをして、美しくあることを捨てない彼の意志の強さがカウボーイとしての誇りを持ったロンと共鳴し、レイヨンの思いやりやユーモアが、ロンを孤独にしなかった。ゲイに偏見たっぷりだったロンの心を融かす。

社会にはびこる医療問題に問題提起をうながすまでに作品は広がって行くけれど、まったく散漫にならない。なぜならこの映画の核はロンが貫き通したカウボーイとしての心、偏見をなくし成長させてくれるレイヨンやイヴとの関係だからだ。

社会派にも見える映画だけれど、その実、ロンの半径1mの物語なのだと思う。だからこんなにグッとくるんだ!と、強く強く思いました。また観たい!
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