警察組織を陰で支配するギャングと職を辞した元警部との攻防戦を描く、フリッツ・ラング監督1953年のハードボイルドなフィルム・ノワール。主人公が支配勢力に立ち向かう孤軍奮闘ぶりがハラハラさせる。グレン・フォードが目的達成のために冷徹にふるまう役柄を見事に演じてた。彼の出演作では、昔に「シマロン」「ギルダ」「ポケット一杯の幸福」を観てた。映画の重いムードに比して、邦題(副題?)がかなり安直に感じる(原題は“The Big Heat”)。随所に女性の慈愛が描かれるいっぽうで、欲にまみれてギャングを脅すのも女性だったね。
男が拳銃を手にして突然自殺する冒頭。彼は巡査のトム・ダンカンで、妻のバーサのそわそわした態度が怪しい。ダンカンの自殺を不審に思った警部のバニオンが真相解明のための捜査を進めていくんだけど、彼の上司がバニオンの行き過ぎた行動を必死で制しようとするのが裏に何かあるんじゃないかと思わせる。ダンカンの自殺の背景にはどうもギャングのラガナ一味が絡んでるらしいことが分かり、しつこく真相を探ろうとするバニオンに対し、ラガナがバニオンの妻を事故に見せかけて殺してしまうという暴挙に出る。ここに至るまでのくだりでバニオンの妻への愛をこれでもかというくらい見せるのが、分かりやすい死亡フラグになってた。
愛する妻を殺されたバニオンが涙一つ流さず、警察組織に嫌気がさして辞表を提出し、たった一人ギャングに立ち向かうところに悲壮感が漂う。警察組織の内部にバニオンに協力する者が一人もいないのが歯がゆい中で、自動車整備工場の足の悪い女がこっそりと手掛かりを教えてくれ、ラガナの子分ヴィンスの愛人のデビーが寝返ってバニオンに協力するという女の慈愛が描かれるのが救い。ヴィンスによって顔に火傷を負わされたデビーが、顔の半分だけでも守れて良かったみたいなことを言うのがやっぱり女だなと思った。ラストでバニオンがちゃっかり復職するのが拍子抜け。