OASIS

アンビリーバブル・トゥルースのOASISのレビュー・感想・評価

4.5
恋人の父親を殺害し服役していた男が街へと帰ってきた。
そんな男に好意を持った17才の娘との不思議な関係を描いた映画。

ハル・ハートリー監督のデビュー作という事だったが、この後に観た数本と比べても一番好きかもしれないと思ったのがこの作品だった。
場面転換時の「はなしかわって」という演出や、少女が最後に口にする「トラスト・ミー」という言葉などそれ以降の作品のヒント的なものが散りばめられていて、そういう意味でも初めに観たのがこれで良かったと思える。

なんといっても17才の女の子を演じたエイドリアン・シェリーの、気丈な振る舞いの中大人への憧れがありありと見える佇まいが愛おしい。
「世界は核の脅威によって明日滅びるかもしれない」と何かと危ない思想を持ち合わせていたりして、その時期特有の物事を悲観的に見たり考えを拗らせたりする関わりが面倒臭そうなタイプを、ジョーカーばりに口紅を塗りたくった顔一発で表現する。

文字通りのはみ出しもので、そんな彼女が刑務所帰りで闇の深そうなおじさんと出会ってしまったらもうそれはどうなるかは分かってしまう。
同年代の男の子には見向きもせず工事に入り浸り、部品の解説を嬉々とした表情で見つめ、ペンチを持ったまま寝たりする。何この娘、チョー可愛いんですけど。

彼は彼で父親を殺してしまった罪悪感を引きずっていて、街を歩くと殺人犯として避けられたりと未だ悩まされている。
しかし、そこには信じがたい真実(=アンビリーバブル・トゥルース)があってという展開を見せる後半からは、若干ウルウル来てしまうくらいの和解プロセスが描かれていて思わぬ感動も。

執拗に娘にモデルを進めようとする父や、工場で異様に上手いエレキギターを掻き鳴らす男など憎めないキャラクターも数多く登場するしで、この街に住んでみたいかもと思わせてくれる。
ただ、ラストシーンから感じるただならぬ不穏さが後を引く映画でした。
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