SANKOU

そこのみにて光輝くのSANKOUのネタバレレビュー・内容・結末

そこのみにて光輝く(2013年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

最初に観た時はとても救いようのない話で、どうしてこんなに暗く絶望的な話を作るのかと思ったが、今回改めて観直して絶望の中に差し込む一筋の光の美しさを感じた。
パチンコでライターをもらっただけの恩で達夫を自宅に連れていく拓児。達夫が一瞬入るのを躊躇するぐらいに一目見ただけで、貧しいと分かるボロボロの平屋。仕事をしていない達夫に対して、ロクな友達がいないと呟く母親の後から現れる拓児の姉千夏。千夏が一瞬達夫を見ただけで明らかに一目惚れしたと分かる描写が素敵だった。
実は仮釈放中の拓児、家族を養うために体を売る仕事をしている千夏、脳梗塞の影響で寝たきりだが性欲は抑えられない父親に、その処理を行う母親。
そしてパチンコと散歩の毎日を過ごす達夫も、かつての仕事で同僚を死なせてしまった罪の意識に苛まれている。
登場人物の誰もが闇を抱えていて、そこから抜け出せないでいる。自分だけのせいではない、でもどうしようもなくどん底の生活に落とされてしまう人はいる。そこから抜け出そうともがけばもがくほど泥沼に引きずられていく。
この作品にもそんな彼らを食い物にするような中島という男が登場するが、彼は家庭もある人間で本来なら幸福な生活を送っている立場の人間だ。
「家族を大切にしてあげてください」と頼む達夫に、「大切にしてるからおかしくなるんだよ」と吐き捨てる中島の姿が印象に残った。
千夏から体を売る仕事を辞めさせ、拓児を新しい仕事につかせようとする達夫の行動が、一瞬の希望の光を与える。
しかし、その光は一瞬にして消え、再び絶望が彼らを包む。
頭では分かっていたのに、どうしても止めることが出来なかった。後からなら何とでも言えるが、どうしても変えられない運命はあるのかもしれない。
これから格差社会が拡がると、もっとこの状況に近い人達は増えるだろうし、介護疲れの問題も色々と考えさせられた。
最後まで暗い内容のまま終わり問題は何一つ解決していないが、それでもそこにあるのは絶望だけではない。最後に海辺で達夫と千夏を照らす夕日がとても美しかった。
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