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百瀬、こっちを向いて。のキヨのレビュー・感想・評価

百瀬、こっちを向いて。(2013年製作の映画)
4.4

「乙一」としても知られる「中田永一」原作の恋愛青春映画。
この設定はどこの「ニセコイ」?とかツッコミを入れてしまいたくなる、
「非モテ」オトコの考える恋愛が具現化されている一方、
タイトルのインパクトを最大化させる脚本は見事。

主人公の相原君はいわゆるスクールカースト最底辺な地味な男の子。
ある日、命の恩人である先輩から、
「この子と付き合ってる噂を消したいから、お前が付き合ってる代わりをしてくれね?」
と突然のお願いされ、さあ大変。
百瀬という女の子と付き合ってるふりをさせられ、振り回される毎日….

とにもかくにも主演の早見あかりの存在感がすごい。
セリフは少し棒読みが気になるところはあるものの、
原作で表現されている「野良猫のような目をした女の子」を
すごく自然に表現している。
食堂のシーンで主人公に怒ってると言われて、「誰が怒ってるって!?」と怒った時の表情や声、
主人公が腹痛で保健室で寝ている時に顔を見せにくるシーンなど、いかにも
原作の百瀬っぽい。
まだ(いい意味で)スター性を感じさせないところも、
「非モテ男子が妄想する、ちょっと強引な女の子」のようなフィクションでなく、
「たまにいたなああいいう無茶振りな女の子」とリアリティを感じさせる結果に繋がってるような
気がする。(個人的に周りにそういう女の子が多かったので、完全な誤解かもしれないが)

ストーリーは設定から原作と違っていて(映画は高校時代から15年後だが、原作は8年後)、
展開でも大きく変えられてる箇所が二つある。
それは主人公が終盤、先輩と話したあとの行動が「自主的」か「受動的」か、
そしてラストカットの二つ。
これについては映画では原作とは違い、
百瀬、ひいてはタイトルの「百瀬、こっちを向いて」を主役にしたかった結果だと思う。
これはアイドルの早見あかりをメインに据える以上、百瀬を主役にする脚本に変えた、
と言えなくもないけれど、高校編のラストカットや映画自体のラストも加味すると、
「百瀬、こっちを向いて」の意味を最大化したかったのだろうと思う。
結果として、某アニメ映画と似た印象になってしまったものの、描き方はあの映画とは違って、
「百瀬」という一個人(と生き方)だったのかなと。
そのためには、あの主人公の行動を「自主的」にする必要があったし、
そのお膳立てとラストがあって初めて、主人公が「相原」ではなく
(相原君の想像だとしても)「百瀬」だと強烈なインパクトを残してる。
その結果、見てるこっちにも相原君と同じような感情を与えてるのだから、
「主役を転換させる」という意味ではすごくうまい作りになってるなと思う。

アイドル映画かと思っていたら演出や音楽、映画も綺麗で、
どことなく青春映画の儚さも満載。
多分、「ソラニン」とかが好きな人は気にいると思います。
映画を見た後に原作を読んで印象の違いを感じるのも楽しい一作です。
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