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ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅のmimocyanのレビュー・感想・評価

3.8
私は父方の祖父が大嫌いでした。子供の頃からこの人が死んでも涙なんて当然流すわけないし、悲しいどころかせいせいするって思ってた。
ところが、実際に祖父の臨終に立ち合ったとき、自分の目からどんどん涙が溢れてきて困った。

生きてるうちは、強い感情が先走っていて、心のどこかに鍵がかかってるんでしょうね。祖父の命が消えた分だけ、世界が軽くなったように感じた夜。カチャリとその扉が開いて、今まで隠されていたいろんな感情がとめどなく溢れたのでした。
そして、その後の葬儀では親族が集まって故人を偲ぶわけですが、そこで自分が知らなかった祖父の姿や、生きてきた歴史をいくつも知ることになった。
もう遅すぎるけど、自分は祖父のことを知った気で、なにも理解してなかったんだなって、わかった。
もう少し、孫らしいことしてあげればよかった。

その時とこの映画が重なる。

ボケてるのか、元からなのか、頑固じじいと化した父親の世迷い言に付き合ってあげる親子の図。
序盤から流れてくる辛気臭さ。モノクロがマッチしてて、独特かつ絶妙な間合いとともに、脱力と笑いをうまーく誘う。旅の最中に見えてくる父と母の姿。コンプレッサー奪還未遂。
散りばめたエピソードが、どれもじんわりと芯に響いてくる。
生きてる間に言葉を交わすこと。それは家族にとって、一番の宝物です。
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