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ファインディング・ドリーのKuutaのレビュー・感想・評価

ファインディング・ドリー(2016年製作の映画)
2.9
ドリー絡みのメインストーリーの完成度は文句なし。ただ、それを取り巻く色んな要素がチューニング不足な印象。もったいない。

記憶障害は、自身のアイデンティティに直結するとても重いテーマ。自分が何者か分からず、理解してくれる人もいない。広い海に一人でいる孤独に気付き、飲み込まれかけた瞬間(今シリーズの薄暗い海の不気味な表現は見事)ギリギリで立ち止まり、もう一度だけ自分に出来る最善を尽くしてみる。その先には、子供の可能性を信じ続けた親の献身的な姿があった。この場面だけで自分は十分泣けたし、わざわざ扱いづらいドリーを主役に続編を作った意味があったと思う。

ハンクの初登場シーンからして、隔離病棟=カッコーの巣の上でを連想。ハンクがチート過ぎてアクションはやや退屈だが、他の障害者であるデスティニーとベイリーが絡んでからは少し良くなった。デスティニーはドジっ子でかわいいし、ベイリーのエコロケーションギャグ(スパイ映画風)も面白かった。

容赦のない子供達。制限された左右の移動→観察と協力→上下移動のダイナミクス。バディものであり、行って帰るお話。結局はトイストーリーである。

以下、細かい不満点。
家族愛を軸にした各キャラの動機付けは自然だが、「ドリーピンチ→幼少期思い出す→乗り切る」パターンは作り手のさじ加減次第でどうにでもなってしまう強引さを感じた。海が怖いハンクを説得する場面は、トイストーリー2のプロスペクター悪者で良いのか問題のモヤモヤが再燃した印象。お前らの価値観押し付け過ぎ、という感じ。

人間界のシーンが多過ぎ、周りに迷惑かけ過ぎ。前作は一応人間から見たら自然現象で済む様なスケールだったのに対し、今回の取って付けたようなカーチェイスは完全に蛇足。「盛り過ぎで冷めちゃう」のは本当に勿体無いと思う。魚たちの大冒険という意味で、前作の完成度には届いていない。

色んな水槽パターンを研究したんだな、とは思ったが、閉鎖的な水族館を中心にした結果、移動アクションの魅力までもを削いでしまった感はある。

前作は狭い水槽のニモと広い海のマーリンの場面切り替えで絵的なメリハリを付けつつ、遠くて近い環境の違いを観客に意識させていたからこそ、再会が感動的だった。今回は殆どが水族館内での奮闘なので、ニモ親子とドリー達の合流が物凄くヌルッとしていて、ストーリーを分けた効果がほとんどない。そのため最後の「教訓」場面もいまいちキレを欠く。そもそも、マーリンもニモも作中でこれといった活躍も成長もしていないため、一緒に旅した意味が見えなかった。58点。
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