ルサチマ

最後の一人のルサチマのレビュー・感想・評価

最後の一人(1930年製作の映画)
5.0
蓮實重彦による上映前解説付き。冒頭の上海での世界一長いバーの踊り子の群衆、酒を飲み交わす客たちを映した奥行きの撮影にビビる。そしてこのバーと対照的に描かれるのが言うまでもなく潜水艦であり、こちらも奥行きを強調した撮影がなされるが、バーのような風通しの良い楽天的な空間からは似ても似つかない、筋肉質の「女のいない(原題)」男たちでさえ今にも窒息しそうな密室空間がゴロンと放り出される。あらゆる乗り物映画の中でもとりわけ潜水艦映画は偏愛するジャンルであるが、今作の息苦しさは切羽詰まってる(フォード特有の喧嘩さえもすぐ収まるほど)。しかもこの映画は同時にスパイ映画でもあるというのだから、溜まったもんじゃない。キャプテンの男がスパイであったかどうか、それさえ答えは宙吊りにして終えてしまう。最後の一人までが嘘をつき続けることでしか陸地に上がることはない。この取り返しのつかなさの描きっぷりに心躍り、泣かないやつは映画を最早見なくていいとさえ思う。
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