ろく

人妻集団暴行致死事件のろくのレビュー・感想・評価

人妻集団暴行致死事件(1978年製作の映画)
4.5
一番最愛の者を、一番最愛の者に、一番最悪のやり方で奪われたらどうする?

「㊙色情メス市場」の田中登が、古尾谷雅人、室田日出夫など撮ったロマンポルノの金字塔。久々に観たけどやっぱり「辛い」。誰を糾弾しても仕方ないんだ。でも糾弾したくなる。誰が悪いのかではない。室田は最後に言うじゃないか。「運が悪かったんだ」って。でもそれって本当なのか。

見ている90分、胸が痛くて仕方なかった。それはこの作品の結末を知っているからだ。題名からもわかるように「誰が殺されるか」は解っているの。そしてその人が素晴らしいくらい清廉であることも。じゃあ、殺すほうは悪いのか。それも題名からわかっている。そして「悪くない」のじゃないかと感じてしまう。僕は彼らを弾圧することはできない。だって彼らは普通の若者じゃないか。

でも悲劇は起きる。わかったような理解は地に落ち、僕らの「優しさ」は踏みにじられる。それでも優しく「観る」ことはできるのか。右の頬を殴られ左の頬を差し出すことはできるのか。

レヴィナスはそもそも人と関係を持つこと自体がその人に大きな迷惑をかけているのだと言っている。それは多かれ少なかれそう。そしてそれがこの映画では「たまたま」増幅されたにすぎない。

妻を殺された室田の演技がこの映画最大の見せ場である。目を見開いたままの妻とその妻を風呂で洗ってやる室田。彼の気持ちは「想像できる」。でも彼の気持ちを僕らは「わかる」ことはできないだろう。それは当事者でしかわからないことなんだ。ただ「わかったふり」をすることぐらいはしてもいいのかもしれない。
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