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ニシノユキヒコの恋と冒険のmomocosのレビュー・感想・評価

ニシノユキヒコの恋と冒険(2014年製作の映画)
3.5
川上弘美の原作からはトリュフォーのドワネルシリーズを想起し、溝口健二やサシャ・ギトリを参考にして撮った、と口にする井口監督。長回しはねらったわけじゃなくてアンゲロプロスや相米みたいなスタイルなんです、と語る井口監督。師匠は黒沢清。シネフィルの申し子のような彼女がもう46歳(前作から約6年ぶり!)ということに驚く。撮るたびにフレッシュな作品を贈ってくれて、映画っていいな〜と素直に思える。冒頭のニシノユキヒコが登場する風がびゅうびゅう吹くシーンはたまたま起きたもの、だそうで、現場や環境を味方につけてしまう感じもすてき。

竹野内豊演じるニシノユキヒコは地に足のついていない(文字どおり、死んでるし。幽霊だし…)優男で、独占しようと思うのもバカらしいほどモテるうえ、女の子が欲しがるものを分け隔てなく与えてしまう。それゆえ必ず女性から去られてしまう。

そのストーリーどおり、ニシノユキヒコは空洞で、彼を取り巻く女性たちが生き生き動く。にやにやするオノマチもいいし(会社でのキスシーン、観てるこっちが恥ずかしい!)、本田翼の確信犯な甘えたぶり(コーヒー淹れる背中にちょっかいいれるのかわいすぎ)、成海璃子の自由さ(ソファでのびのび、酔っ払ってけらけら)がたのしい。そしてその「ずっといるのにずっといない」という、実態のないニシノユキヒコを演じた竹野内豊がぜつみょーでした。うまく人には薦められないけれど、晴れた休日に映画館でこの映画を観たら、いい日だったなーと思える。そんな映画。
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