てつこてつ

フォックスキャッチャーのてつこてつのネタバレレビュー・内容・結末

フォックスキャッチャー(2014年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

第67回カンヌ国際映画祭監督賞受賞作品。第87回アカデミー賞でも最優秀主演男優賞、最優秀助演男優賞、監督賞、脚本賞など5部門ノミネート。Netflixで視聴。

1984年のロサンゼルス五輪の、揃ってレスリング金メダリストの兄弟に、その後、このような悲劇が起こっていたという事実に驚く。

作品は、冒頭から常にどこかピリピリした重苦しい基調で、且つ、ドラマチックに盛り上げる事もなく淡々と事の発端から事件発生までを描いており、下手なホラー映画よりも、よほどゾッとさせる心理サスペンス劇となっている。

ロス五輪フリースタイルレスリング82キロ級金メダリストのマーク・シュルツと彼のスポンサーに突如名乗りを上げた財閥の御曹司ジョン・デュポン氏の愛憎劇の繊細な描写は見事。2歳にして父親を失い、デュポンを第二の父親のように思慕したマーク、また見返りとしてマークに寄せる全幅の信頼を公の場でも発言してきたデュポン。

やがて、デュポンの熱烈な要望でマークの最愛の兄で、同じくロス五輪フリースタイルレスリング74キロ級金メダリストのデーブを自身のチーム「Fox Catcher」に呼び寄せたことで、結果を残す兄に対するデュポンの寵愛の先が向かっていき、マークの気持ちは激しく動揺していく・・

キャスト全員がお見事。マークを演じたチャニング・テイタム、デーブを演じたマーク・ラファロは、首が太く金メダリストとして説得力のあるレスラーならではの強靱な肉体を作り上げて役に挑んでいるし、デュポンを演じたスティーブ・カレルも本職がコメディアンとはとても思えない、年老いた母親との歪な関係に葛藤し、偏った国粋主義者、軍事マニアで狂気的な支配欲と強迫観念に囚われたキャラクターを怪演。

映画を見た後にWikipediaで知った事だが、実は、デュポンは統合失調症を患っていたそうで、実在する財閥との名誉毀損の裁判に発展する可能性を懸念したのか、その重大な事実が、この作品では語られていない。

だから、マーク・シュルツ本人がベネット・ミラー監督に対し、とある映画評論家が「マークとデュポンの関係性に同性愛嗜好が見て取れる」と批評したことに激怒したというのも分からないではない。

Netflixで配信されているこの事件のドキュメンタリー作品も、この後、見る次第。
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