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太秦ライムライトのRenkonのレビュー・感想・評価

太秦ライムライト(2013年製作の映画)
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日本映画史に遺る数々の名作を世に送り出した太秦の京都撮影所を舞台に、時代劇の斜陽、そして「斬られ役」として何十年も作品を彩ってきた男•香美山の最後の花道を描いた作品。
正直言って地味な映画だ。しかし、いつ間にやら心の琴線が斬られており、気づいた時には泣けていた。

主演は50年以上に渡り、斬られ役•殺され役を演じてきた「5万回斬られた男」こと福本清三。
経歴がかなりダブっていることから、主演はやはりこの男しか無かっただろう。
口数少なき気骨な男(漢)が時折見せる哀愁、悔しさと儚さの淵で思わず堪えきれなくなる男泣きに、思わずこちらももらい泣きしてしまう。(なぜおっさんの涙は、こうも美しいのか)
そんな"衰退"と"老い"の現実に立たされた香美山と、彼に殺陣を習おうとひたむきさを見せる、若き女優さつきの邂逅。
父と娘以上に年齢の離れた2人はいつしか互いを尊敬し合い、大きな絆で結ばれていた。
そして、香美山に対するさつきの熱い想い、尾上清十郎(松方弘樹)の粋な約束が実を結ぶラストは、正に漢の花道に相応しい、美しき"終幕"であった。

ちなみに太秦撮影所から世に出た作品は時代劇だけではない。
任侠映画や東映ヤクザ映画、五社英雄作品などもここで撮影された。
(時代劇を殆ど知らない自分からすると、福本清三といえば「仁義なき戦い広島死闘編」で驚異の跳躍力を体現した撃たれ役の印象が強い)
それ故に文太兄ぃや健さんが亡くなった現在観ると、任侠•ヤクザ映画に対しての鎮魂歌にも感じてしまって、ラストの中島貞夫、松方弘樹、福本清三の構図を見て、またしても涙してしまうのだ。(ちゃっかり仁科貴(拓ボンの息子)をキャスティングしてる辺りもニクい)
ちょっと遅くなったが、本作を2014年ベスト男泣き映画に選定したい。

(2014.12.29:角川シネマ新宿)
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