ササキ・タカシ

思い出のマーニーのササキ・タカシのネタバレレビュー・内容・結末

思い出のマーニー(2014年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

主人公にとってマーニーは永遠の夏の日を生きる幻の少女だ。確かにあの夏、世界には彼女と自分の二人だけしか存在していなかった。彼女は多感な幼少時代を過ごした人間なら誰にでもいたはずの想像上の親友なのだ。粗野な少年だった僕にさえそういう存在がいた。居心地の悪い現実から夢の世界に連れ出してくれるそのかけがえのない親友は、誰よりも美しく汚れのないもう一人の理想の自分だった。マーニーとの時間はとてつもなく甘美で、幸せで、でも泣きそうなくらい切ない。ボートの漕ぎ方を教えてくれたあの時間、お互いのことをひとつづつ質問し合ったあの時間、賑やかなパーティーを抜けだし二人で拙いダンスを踊ったあの時間。なんと美しいシーンの連続だろうか。僕はその時間が永遠に続いてほしいとさえ思ったのだ。でも、それが終わりのある夢であることは、僕も、そして主人公である少女も、最初から知っていた。優しくて儚い残酷な映画だと思った。

物語の後半、「マーニーとは一体誰なのか?」にまつわるミステリーの部分が強くなり、最後には広げられたその風呂敷がキレイ過ぎるほどキレイに畳まれる。個人的にはそのタネあかしがあまりにも丁寧でちょっと残念に思ってしまった。マーニーは、実在した可哀想な少女だったとしても、主人公のことを最後まで愛してくれたお祖母ちゃんだったとしても、あくまでも主人公にとって夏の日に出会った永遠の親友でいてほしかったのだ。例え幻だとしても、マーニーが確かに目の前に存在していたことにしてほしかった。だってマーニーは、僕らにとっても、夏の日に出会った永遠の親友なわけですからね。
ササキ・タカシ

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