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8月の家族たちのsatchanのネタバレレビュー・内容・結末

8月の家族たち(2013年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

二階から階段を下りてきて、ブツブツ悪態ついてる婆さんがメリル・ストリープだと気づいた時、またアカデミー賞?と思ったほど、強烈な登場の仕方でした。今まで黙ってたけど、あたしゃ、全部知ってるよ、お見通しよ、の強すぎる母さんバイオレット。安定剤飲まなきゃ、生きていけないでしょ、張りの悲しい主張を聴き続ける映画。次々と知られざる過去が赤裸々に語られ、どんどん物語に引き込まれてしまいました。この映画では、主演女優賞ノミネートに終わっています。

離婚手続き真っ只中の長女バーバラ役ジュリア・ロバーツも助演女優賞にノミネートされているだけあって、良い演技でした。人生の苦渋を味わいつつある40代女性。思春期の娘を抱え、夫ビル(ユアン・マクレガー)には浮気されている最中、父親が失踪。慌てて実家へ帰ると、母親バイオレットは薬依存症で、次女は従兄弟と恋に落ちていて、三女の婚約者が娘に手を出す…そりゃ『プリティ・ウーマン』も怒鳴るでしょ、と思います。

実家に残り、母親の面倒をみる次女に『アリー・マイ・ラブ』のジュリアンヌ・ニコルソン、自由奔放な恋愛を楽しむ三女に『ギルバート・グレイプ』のジュリエット・ルイスと、それぞれの役のイメージにピッタリ。ジュリア・ロバーツとユアン・マクレガーの娘ジーン役に『リトル・ミス・サンシャイン』『私の中のあなた』などのアビゲイル・ブレスリン。

その他も、キャストは豪華で、次女が恋に落ちる従兄弟リトル・チャールズにベネディクト・カンバーバッチ、カンバーバッチの父親チャールズに『アメリカン・ビューティー』『ボーン』シリーズのクリス・クーパー。ダメ息子とかばう父親の愛が良い感じなんだけど、実は血の繋がりのない他人の子供であるところが皮肉な感じ。バーバラ(メリル・ストリープ)の妹マティ・フェイが義理兄と浮気してできた子だということをチャールズも息子も知らない。この妹役のおばちゃんも、いい感じでした。

みんな、素晴らしかった。それぞれの立場で生きてきた人生を振り返り、こぼす一言。良いと思う道を歩んで来たんだろうけれど、何でこうなってしまうの?といった、人が誰しも経験するような葛藤、焦燥感が詰まった作品でした。それにしても、狭い世界で複雑に絡み合う人間関係。決して、明るい気分になる映画ではないけれど、必死なのは自分だけじゃない、みんな頑張ってるんだ、が分かるから、良かったのかもしれないです。
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