文革時代のキラキラ童貞青春物語。ストーカーまがいの変態行為を続ける少年が一目惚れした年上のお姉たまとお近づきになる。仲間内にも紹介し仲良く過ごせていたうちは良かったものの、そのグループの中のイケメン野郎に掻っ攫われてしまう。嗚呼、なんとも哀しき童貞回顧記…なんていう風に観ていたが、終盤辺りからどうもそう一筋縄でいく作品でもない事に気付く。と言うのも回想形式で語られていく彼の輝かしい日々は徐々に虚実入り混じり曖昧なものになっていき、とは言え後戻りは出来ないからと強引に彼等の関係性が破綻するところまで語られていくからだ。となると「クローズ」ばりに対抗勢力とバチバチにやり合う筈が手打ちになった現場が「盧溝橋」である事すら何やら意味深に思えてくるし、「紅い」水着を来た彼女は去って行き、彼女から貰った「紅い」水着を着用した少年もまた仲間から足蹴にされると言うのもかなりの意味を帯びてくる様に思える。高圧的で小狡い教師、家父長性の権化の様な父、そんな家庭での抑圧を嘆く母、文革の最中に自殺をする祖父、煙突から落ちて煤だらけになったり雨で泥濘む中を自転車で溝に突っ込んだり…むしろその様な負や傷の記憶の方が確信を持って思い出されている様な。直接的では無いにしろかなり批判的な意図を感じるし、後々集結した彼等の前に現れる永遠の少年こそが彼等の青春を象徴する存在なのかもしれない。ただ確かに輝いていたと思える/思いたい過去、思い出。それはそれは太陽の様に眩しい日々、やはりその辺りの描写がとても温かく美しく感傷的に思えた。