にゃんこむ

リトルプリンス 星の王子さまと私のにゃんこむのレビュー・感想・評価

4.0
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの『星の王子様』のアナザーストーリーを題材としたフランス製作のアニメーション作品。9歳の女の子目線の現実は3DCGパートで、若かりし頃のおじいさんと星の王子様の思い出を女の子が想像した世界はストップモーション・アニメで製作されています。

○教育熱心な母親と一緒になって名門校への入学を目指す女の子。お受験は失敗し、最終手段として名門校の学区内にお引越し。学区内であれば自動的に入学できるので一安心かと思いきや、お隣さんはなにやら変なおじいさん。ちょっとした事件で被害を被った事もあり、真面目一辺倒な母親は隣人を毛嫌いしていたが……。

この作品は3DCGパートとストップモーションパートの別様な描きも見事ですが、さらに3DCGパートの対比もとても良かったです。
母親と暮らす家や街は窮屈で抑圧された大人の世界。画一的で無機質で直線的で色数も少なく寂しくつまらない。そこから壁を一つ隔てた先は、おじいさんのいる無秩序だな世界。雑然としつつも温かみがあり色彩溢れる豊かな世界。壁を抜けた先はパーッと明るくなり、温度感が一気に様変わりするところがとても好きです。

女の子の母親は、悪く言うと融通が利かないし支配的だけれど、女の子の事を第一に考えていると分るので、歯がゆい気持ちになります。
母親は大人で人生経験も積んでいるので、引かれたレールの上から脱線した人生の惨めさや辛さをよくわかっているからこそ、娘にはそんな人生歩んでほしくない。幸せな人生になってほしいと思う気持ちが強く、また母親自身も転落した人生を恐れている。
しかし、そんな失敗を恐れてばかりの味気ない人生ではなく、冒険心溢れるキラキラした世界もあるんだよ、とやさいく諭してくれるような良い作品でした。
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