このレビューはネタバレを含みます
5,6は観ていると思いますが、何度観ても胸にズシンとくる見応えがあります。
角田光代さん原作の映画。
個人的にかなりしびれる小説家です。
本作の小説は読んでいませんが、この映画の素晴らしさの半分以上はストーリーの秀逸さが担っていると、ひしひしと感じます。
そして。
なんっっと言っても、小林聡美さん…!!!
かもめ食堂やマザーウォーターなど、大好きな作品で主演をつとめられている小林聡美さんですが、この映画の小林聡美さんはもう格別です………。
主役の宮沢りえさんや、他の俳優陣の皆さんも素晴らしいのですが、役どころも相まって、小林聡美さんがもう本当に、本当にしびれ倒すんですよ。。
何度も観ているので結構はっきりと覚えていますが、最後に宮沢りえさんと小林聡美さんが会議室で二人で話すシーンがあり、そこが、そこがもう…たまらないのです。そこを観たくて何度も観ています。
ああ、これもうネタバレにしてもう少し駄文書こう。笑
エリートだけどどこまでもアホな夫、若くて世渡り上手な職場の女の子、そして、すっかり変わってしまった恋人。
彼をあんなクズにしたのは、紛れもなく宮沢りえさん演じるりかですね。
お金の使い方をまだ知らない大学生にあんなに与えちゃだめ。お金を貸すときにお金持ちを装ってしまったから、嫌われたくないから、りか自身も浪費とは無縁の生活を送ってきてお金の使い方が分からなかったから、あんな豪遊してしまったのだろうけど、それが完全に裏目に出てしまった。恋人も価値観がどんどん狂っていき、りかに対する甘えはどんどん加速し、きっと「こんなにお金持ちなんだから」とお金の返済に対する責任感もどんどん薄れたのでしょう。
でも、二人の関係の潮時は彼の方がわかっていた。
りかはあらゆる「だめなこと」にフタをしすぎて、見て見ぬふりをしすぎて、浮気をされたその夜にも、無かったことにして関係を続けようとする。
恋人は「にせもの」の関係にもう疲れてしまったのでしょう。
最後に角さん(小林聡美)と話すシーン。
手を掴まれたとき、りかは「離して」と暴れたりせず、「一緒に行きますか?」と言った。
たぶん、抵抗していれば角さんも反射的に必死に取り押さえたでしょう。
でも、あの言葉で、角さんは固まってしまった。
行ったらどうなるのだろう、行ってみたい、と、あの短い瞬間に考えてしまったのではないでしょうか。
同じだった二人の道が大きく、大きく離れ、もう二度と交わらなくなった、あの瞬間。
あのシーンは、本当に胸が詰まります。