風の旅人

紙の月の風の旅人のレビュー・感想・評価

紙の月(2014年製作の映画)
3.5
梅澤梨花(宮沢りえ)は別に平林光太(池松壮亮)のことが好きだったわけではない。
この退屈な日常から脱出できるなら、誰でもよかった。
それは確かに偽物だけれど、まだこちら側の関係だった。
しかし梨花が光太の借金返済のために顧客から横領した金を渡したとき、二人の関係性は変化してしまった。
一度あちら側に踏み入ってしまったら、もう二度とこちら側には戻れない。
梨花の欲望は止まることを知らず、無限に肥大していく。

梨花のやっていることは確かに許されざることなのだけれど、どこかでそれを羨ましいと感じている自分がいた。
多くの人は相川(大島優子)のようにこちら側とあちら側の境界で上手く立ち回るか、隅(小林聡美)のようにこちら側の倫理に忠実に従う。
梨花は自分の行為が偽物であることを悟りながら、金で自由を買おうとした。
ラストの東南アジアの映像は蛇足だが、日本の閉塞感から脱出したい気持ちはよくわかる。
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