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ニンフォマニアック Vol.1のOASISのレビュー・感想・評価

ニンフォマニアック Vol.1(2013年製作の映画)
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怪我をして倒れていた女性を見つけ介抱のため自宅へ招き入れた独身男に、彼女の口から数えきれない男たちと交わってきた淫靡な物語が語られるという話。
8つの章仕立てで構成され「Vol.1」では第1~5章が描かれる。
監督はラース・フォン・トリアー。

シャルロット・ゲンズブール演じる「色情狂」の女性ジョーの悲惨な人生が描かれ、終始どんよりとした気分になるかと思いきや、悲劇と喜劇が混合された面白可笑しい作品だった。
一章の「3+5」なベッドシーンしかり、2章の「女々しいやつだ」しかり。
特に三章のユマ・サーマン演じる'H夫人'の一人舞台は笑いを堪えるのに必死だった。
あれは完全に笑いを取りに来ているし、三人の子供達を引き連れて「見て!ここが淫らなベッドよ!」と見せつけるシーンも狙ってるだろうしで、場内は爆笑の嵐だった。
笑っているのは男性客だけだったが・・・。

BGMは殆ど無いにも関わらず物語に引き込まれてしまうのは、章毎に印象的なカットが多数存在するからだろう。
暗闇が数十秒続き、倒れている女性を発見してデスヴォイス爆発のテーマ曲が流れるスタイリッシュなオープニングには痺れた。
一章の「釣魚大全」で挿入されるカエルの飛び込みや川のせせらぎといった風景描写、親友との「どれだけ多くの乗客とヤれるか」ゲーム時に流れる「BORN TO BE WILD」の巻き戻し演出にもゾクゾク。

四章のモノクロ画調な表現や五章の三旋律+三分割な映像表現などからも飽きさせない工夫が感じられる。
女性が年老いた男性に自分の経験談を只管語るという方式上どうしても退屈がちになってしまうが、章毎に色調が違うので全く別の物語と捉える事も出来るし、そうするとその一つ一つに新たな発見があるかもしれないはずだと考え見入ってしまう。

ジョーは2歳から自身の性器について認識し、7歳の時になんらかの手術を受けて、15歳の時に処女喪失するが、それぞれの経験の間に起こった事がすっぽ抜けているのでそういった人格が形成されていく過程が分かり難かった。
そこはステラン・スカルスガルド演じる老人セリグマンとの哲学的・数学的な会話や風景描写で埋められている様な気もするが、「フィボナッチ数列」やら何やらややこしい用語の数々は理解の範疇を超えていた。
とりあえず「3+5」がジョーにとって一生忘れないほど重要な意味を持っているという事だけは覚えておきたい。

クリスチャン・スレーター演じる父とも怪しい関係を予感させるし、シャイア・ラブーフ演じるジェロームとの密接な関わりが本当に存在するのか?という疑問を残しつつ衝撃的な幕切れをしてしまう第一部は、それ単体だけではどうにも感想に困る。
エロティックな描写も「アンチクライスト」に比べるとまだまだ小手調べといった様子だし、モザイクもかなりの邪魔をしていたので、無星としておいて第二部に期待。

それにしてもデカデカとモザイクがかかったチン○の写真が延々と続く下りは笑った。
「今までの歴史の中で割礼された皮を集めたら火星まで行けるでしょうね、'仮性'だけに」ってやかましいわ!

@テアトル梅田
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