kirito

ソロモンの偽証 後篇・裁判のkiritoのレビュー・感想・評価

3.3
【そして、静かに学校内裁判は幕をあける…】

<前篇からの続き>
1990.12.25 早朝
柏木卓也の死体が見つかった。
彼は自殺したのか。それとも殺されたのか。
関係者の中で一体嘘をついているのは誰なのか。
この事件の真相は『学校内裁判』によってついに明らかとなる…

解決編なので、割とさくさくと物語は進む。
前半部分では新事実が出てきたり、新たな登場人物がでてきたりとさらに伏線をはっての後半戦。


サスペンスとはいうものの、上質とまではいえないと思うし、正直なところ、結末は予想ができた。
どんでん返し的なのを想像しているとしっぺ返しをくらうであろう。


ただ、ストーリーがどうというか、宮部みゆきの原作なだけあって脚本はまずまずであり、邦画としての完成度は高いのではなかろうか?
もちろん私は原作を読んでいないので大きいことはいえないが。


やはり良いなと思うのは、どこまでも14歳という中学生「らしさ」である。
これにつきる。
確かに、裁判の形はなしているが、本家には到底及ばないし、また及ぶ必要もないと思う。
が、やはりどこか学芸会的な感じは否めず、ツッコミどころはあるものの、ある意味ではそれが「らしさ」なんだと思う。

ただ、同時に現実には絶対にこんな裁判は実現することは無いと断言できる。
子供達だけで解決するとはいいつつ、大人の協力を実はかなりえているし、大人がこの裁判をやることを許可するとは思えない。

………

裁判の中で関係者は自分の心をついに打ち明け出す・・・
闇に囚われていた者、悩みに押しつぶされそうになっていた者、そして…真実を知りながら黙っていた者。
彼らの証言が一つ一つ終わるたび、聴衆は驚き、悲鳴をあげ、憤り、また驚いた。

「裁判がなければ、私たちは前に進めなかった」という主人公の発言のとおり、彼らはこの裁判を経ることで大きな成長となったに違いない。

人生においては、その後の人生観を大きく変える「ターニングポイント」が存在するが、彼らにとってみれば、この裁判がそうだったに違いない。


そしてこの映画は振り返ってみると、いつのまにか青春映画となっている。
終わってみないとそれに気づけないのもまた魅力なのだろうか?
清々しい開放感みたいなのはないけど、彼らが心を解き放ち言いたいことを言えたのなら、私は大いに満足なのである。


前篇が割とよかっただけに後篇の評価がいまいちなのは、期待した結末と違うからというのが一つの原因ではないかと私は考える。

ただ、中学生達の演技にいちゃもんをつけるのはナンセンスであろう。
なぜなら、彼ら(33人の新鋭達)はまだ俳優の「卵」なのであるからだ。
今後多くの人間がこの作品を機に日本の映画界に飛翔していくに違いない。
その意味では、現実世界の彼らにとってもこの映画は「ターニングポイント」になったと思う。
邦画の未来を背負う彼らには大いに期待を寄せるところだ。

邦画としての完成度は高いので、2015年の邦画作品としては上位にくる出来ではなかろうか。
機会があれば、是非手にとってみることをオススメする。

あと一つだけ、
「真実」に涙するというのが本作のキャッチコピーだが、私の脆い涙腺でもピクリとも動かなかったこともここに合わせて付しておく。

2015.10.23
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