YukiSano

ソロモンの偽証 後篇・裁判のYukiSanoのレビュー・感想・評価

3.8
スーパー中学生日記。法廷篇。

ついに本番を迎え、中学生達による裁判ごっこが始まろうとする。ただの裁判ごっこに見えて、彼らには譲れないアイデンティティーをかけた真剣な戦い。

そこの子どもと大人の温度差を埋めるため、主演クラスの大人俳優達がついに本領を発揮し始める。前回ではしょうもなかった大人がカッコいい所を見せ、親や教育者の在り方を問いかけてくる。

壮大な茶番劇なはずなのだが、この大人達の目線が心に刺さり、親として心を引き裂かれた。どの親心とも共感し、愚かな行為すら自戒の念を待ちいて鑑賞してしまう。

なので不覚にも子を失った塚地と校長である小日向が裁判で見せた姿に涙腺が緩んだ。年を重ねると昔嫌いだったような話がこんなにも心に染みるのかと痛感。

ラスト明かされる秘密は予想の範囲内だし、非常に身勝手な理由で裁判が行われているような気がする。しかし、これは大人が子どもとどう接したら良かったのか、そうすれば日本は変わったのか?そんな失われた30年への問いかけに思えてならない。

最後に明かされる真犯人の答えこそが、この法廷ファンタジーの言いたいこと。

親とは何なのか、大人とは。
やがて主人公達も大人となって親になった。

しかし、そこまで大人を隠れ本命テーマにするなら犠牲者の親心を丹念に描くべきではなかろうか?彼が何故、あんな行動にいたったのか?親の目線から語られなければ、本懐を成さないのではないだろうか?結局、最後には真犯人の偽善エゴで裁判は行われたのではなかろうか?それでは、本末転倒ではないのか。

そう思ってしまった。

ただラストのご都合主義に至るまでの、心理描写やメッセージは特筆すべき演出。

最後の最後に中学生日記似なってしまうことも含めて愛おしい。もしかしてわざとそうしたのかもしれない。全てを偽善で埋め尽くした失われた30年の日本を表現したかったかもしれない。

そんな風に思えば納得できる。
YukiSano

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