ソラアユム

ゼロの未来のソラアユムのレビュー・感想・評価

ゼロの未来(2013年製作の映画)
4.5
近未来、孤独なプログラマーのコーエンはコンピュータで世界を支配するマンコム社で仕事をしている。
そんな時、会社の取締役と面会したコーエンは新たな仕事を言い渡される‥‥





近未来を舞台に新たな仕事「ゼロの定理」の解読と自身の存在意義に苦悩するコーエンの姿を描いたSFドラマ。


世界観が素晴らしい。
明らかに1980年頃の人々が思い描いた未来像である古臭さ、懐かしさを感じさせる。
そこに、現代の科学技術の発展を考慮に入れ独創的な未来世界を作り出したのは見事だと思います。
この世界観は今の我々が決して思い描く事はない”行き過ぎた未来”だというのもポイントである。
レトロフューチャーが好きな人には、たまらないでしょう。


しかしですね、ストーリーは難解でした‥‥
ラストまでは良かったんですよ。最後の最後で理解不能になりました(笑)
主人公コーエンはめざましい発展を遂げた世界にすっかり取り残され自身の存在意義を見失っています。
でラストで‥‥に‥‥され、最終的に‥‥するんですが‥‥。
不親切すぎますよね?(笑)


”文明や科学技術の発達に対する警告”と私は解釈しました。
【解釈というより妄想に近いです。ご了承下さいm(_ _)m】
科学技術の発展は環境破壊、地球温暖化だけではなく私達人間の精神=心が危険に晒されるのではないでしょうか。

今作の主人公の一人称が”我々”であり、これは人間全てを指している気がします。
そして、”ゼロ”。
この数字は人類の”科学技術の発展”を象徴していると思います。
数字の0は数学上の飛躍的な進歩をもたらした要因の一つですから。

作中では、主人公コーエンはゼロの解読に苦悩し精神崩壊寸前までいきます。
つまりは、科学技術の発展は人々の心に悪影響を与えるのかもしれません。
その犠牲者としてボブが描かれている。
ゼロの定理がいつまでたっても100%にならないのは、人々の理想が科学技術の発達で決して満たされるものではない事を示唆していると同時に、
人々は科学技術の発達に起因する便利さや快適さなどの産物を求め続けており、そこに終わりがない事、科学技術の発展は無限大である事を意味しているのではないでしょうか。
100%になればそこで終わりですからね。
そのうえでマネージメントという言葉のチョイスも見逃せない。

科学技術の発展は人々の心に様々な影響を与える。
機械が発達すれば仕事の効率が上がる。
仕事の効率が上がれば自由時間が生まれる。
自由時間があれば自分を見つめ直す‥‥すなわち自身の存在意義を問う‥
今作では自身の存在意義を問う事=人生において無意味な事であると言及されています。


未来では科学技術の発展がもたらすのは決して良い事だけではないのかもしれませんね。

科学技術が悪影響を与えると聞けば、あぁ自然が破壊されて‥‥
となるとこですが、今作では人々の精神も蝕まれるというのが非常に面白いと思いますがね‥‥
ラストはどうにかしていただきたい(笑)
とはいえ、科学と人々の未来における関係を暗示した秀作です。