父親が作家として生計を立てており、娘と息子もまた作家となっていくこの『Stuck in Love』(愛にとらわれて)は、何ということもない可愛い映画ではあるものの、『ウォールフラワー』(スティーブン・チョボスキー監督, 2012年)では高校1年生だったチャーリー(ローガン・ラーマン)が、作家志望の大学生として再登場する趣きがあり、そうしたつながりを愛おしく感じる。
主人公の父親が、セフレからお見合いの服装を指導され、取っ替え引っ替えした後に、「それだったらやりたくなる」とOKをもらうシーンの素敵さも忘れがたい。
また僕にとっては、ささやかながらも見過ごすことのできない、女性に関するある疑問について触れてくれた作品でもある。その疑問とは、弟のラスティ(ナット・ウルフ)がスティーブン・キングの熱烈なファンであるいっぽう、姉のサマンサ(リリー・コリンズ)が、そのことを馬鹿にしているという設定に描かれている。
よく口にされるものとして、男は荒唐無稽なロマンチスト/女は現実的なリアリスト(同語反復)といった主旨のものがあるものの、それではほとんど説明になっていないように感じられる。言葉をシャッフルするように入れ替えても、それなりに通じてしまうからで、女は現実的なロマンチスト/男は荒唐無稽なリアリストと言ってみてもよく、また、男が現実的なリアリスト/女が荒唐無稽なロマンチストになる場面も、僕は数多く見てきた。
このことについて、暗喩の達人であるスティーブン・キングという設定がとても効いており、抽象的に言い表すならば、暗示的な象徴性を男は愛するいっぽう、女は明示的な具体性を愛すると言い換えてみても良いかもしれない。
もしもかなうことなら、このことについて、リリー・コリンズのような素敵な女性に話を聞いてみたい。けれどささやかな経験から、それが難しいことも僕は知っている。荒唐無稽なリアリストであり、現実的なロマンチストでもある僕は、現実世界では、知性よりも嗜好性のほうが強く働くことを知っている。