ちろる

複製された男のちろるのレビュー・感想・評価

複製された男(2013年製作の映画)
3.8
カナダの原題「enemy」でサブタイトルは"You can't escape yourself"なのにもかかわらず、めちゃくちゃ邦題のミスリード感が気になります。
雰囲気はドゥニ ヴィルヌーブ監督らしくとことん暗い。
この監督の描く登場人物のおうちって基本的に殆ど照明を付けないのが何故なのか個人的に気になるけど、今回は特にこの鬱屈とした雰囲気がこのストーリーの材料となっていて、ラストのまじか!の映像に繋がります。
隠喩的表現が散りばめられているため本当は何回か観てからレビューを書くべき案件なのでしょうが、この初観のインスピレーショを個人的に忘れたくないので書きました。
アダムとアンソニー、一体登場する2人の男のどちらが主人公なのか?
なによりもここがキーワード。
始終不安げなアンソニーの嫁ヘレンの戸惑いと不安に満ちた眼差しとは対照的に、アダムの恋人メアリの存在感はあまりにも漠然としていて、だんだんと分かってくる恐ろしさ。
「ブレードランナー2029」や、「メッセージ」の印象があって、はじめはSFなのかと思っていたけど、控えめで地味な深層心理に迫った心理ミステリーでした。
そしてラストのあからさまな映像は予想外!でまじかぁ!となりました。
スクリーンで見たらこの鬱屈とした感じに更にのめり込むのかもしれませんが、悶々とした気持ちで帰りそう。
刺激を求める男どもにとって結婚は蜘蛛の巣のように感じるのでしょうか。
束縛しないけど、抱いたらエロい、あんなメラニー ロランみたいな女性がやっぱいいのでしょうか。
男の人の方は更にこの主人公の深層心理に入り込めるのかもしれません。
最後にようやく意味が分かると視点が少し変わってくきて面白そうなのでまたもう一度観てみます。
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