・ジャンル
ホラー/サスペンス/カニバリズム/ドラマ/リメイク
・あらすじ
舞台はニューヨーク北部
嵐が迫るある日、パーカー家に母エマの訃報が突如として届く
父フランクは憔悴しながらも子供達にそれまで通りの暮らしを命じるがそれは血塗られた伝統の続行を意味していた
何も知らぬ末っ子を除き葛藤する姉妹
一家の伝統とは食人であった
彼らがそれぞれ苦悩していた頃、エマの検視を担当した医師バローは小川で人間の物と思しき骨を発見
調査を独自に開始したバローはやがて一家を怪しむ様になり…
・感想
ギレルモ・デル・トロのデビュー作「クロノス」の続編として製作された「猟奇的な家族」のリメイク版
実質の主人公ローズ役をドラマ「オザークへようこそ」や映画「アシスタント」等で知られるジュリア・ガーナーが務めている
一家の伝統として食人が根付くに至った背景という面では環境としては原作の方がまだリアリティが比較的ある一方で今作は経緯をしっかりと描いており、変わらずいささか非現実的ではあるものの投げっぱなしな部分が少なく真摯な作品に感じられた
また原作から一家の性別が反転しており、それも違った魅力を生んでいる
家父長制的な父のモラハラ一歩手前な支配、僅かに百合を匂わせる姉妹の絆、少女達の無力感…
ピリついたムードと原作とは違い美を感じさせる画の中で繰り広げられる家族の愛憎劇は重苦しく良かった
ハッピーエンドとバッドエンドが両立された結末も含めて良い意味で胸糞な内容
また食人映画でありつつゴア描写はマイルドめだが、だからこそ調理後の跡形も無さに何とも言えない気持ち悪さを感じさせるし終盤ではそこに追い討ちをかける様な事も起きたりと想像力への訴えかけ方が上手い
それらを支えるキャスト達の演技も素晴らしかった
そして個人的に印象的だったのが食人を題材とした映画が数多ある中でも非常に珍しいクールー病への言及が為されていた事
それが話にもしっかり絡んでくる点も物語の闇をより深めていて巧み
現実的な説得力という物には欠けるストーリーかもしれないがそこへの疑問よりも没入感を伴う厭な世界観が繊細に構築されている点の魅力が強いので個人的には結構楽しめた
アメリカ作品でも時々あるどんよりとした救いのない映画が好きな人には刺さる部分があるかと思う