Kuuta

アメリカン・スリープオーバーのKuutaのレビュー・感想・評価

3.8
ピンクと青と黒ばかりの淡い映像は、ムーンライトの撮影監督と同じジェームズ・ラクストン。とても良い。最後に目の覚めるような赤を出すのも決まってる。

夏の終わりの大人になるための通過儀礼。その境界に立った少年少女。階段の踊り場のノワール感。プールやスプリンクラー、湖で遊ぶ子供(=青)と、ライターやタバコを使いこなす、マニキュアを塗った大人(=赤)の対比がずっと続く。ポスターでは、ピンクと青の重なったもやもやを若者が見つめている(余談だがムーンライトも水がキーとなる映画だった)。

大人ぶっているマギーはタバコをふかすものの、青い水着を着ている。水のように見えるお酒を返しにいくが、置いてきたピンクのお泊まり会カードが原因でもう一度会うことに。迷いながらもウォータースライダーの途中で踏みとどまり、最後は水色のシャツに身を包む。この行ったり来たり感が今作の特徴だと思う。

青いシャツの上に赤いパーカーを着たロブはライターを片手に、実在するかも不確かな女の子を探し続ける。クラウディアは大人の恋に浸っているつもりだったが、顔に赤い痣を作り、青い布団にくるまる。大学生の衣装は黒か、青とピンクが混在している。偽モスラを見てテンションの上がった黒のスコットは、学校を通り抜けて双子をプールに連れて行く。途中で双子の片方だけが水を飲む。

お泊まり会での垢抜けない雰囲気がまさに子供の集まりって感じ。大学生?の湖畔のパーティーは黒いが、その中でもある青年はマギーとの青い青春を見出そうとする。「子供でいる大切さを見出し、ギリギリで踏みとどまる」展開は極めて大人で冷静な着地であり、原題の「神話」にも通じる作者の俯瞰した目線を感じる。大人にとってなんてことない一晩が子供にはどれだけ長いことか。やがて何事もなかったかのように昼が始まり、少しだけみんなが成長する。これがデビュー作とは…。77点。
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