きゃん

繕い裁つ人のきゃんのレビュー・感想・評価

繕い裁つ人(2015年製作の映画)
3.7
クラシカルなミシンで洋服を作る職人肌の主人公と、彼女を取り巻く人々が織り成す物語を紡いだ作品。ゆったりと流れる雰囲気が素敵。布地を裁断する音やミシンを踏む音が心地良くて癒された。

町の仕立て屋「南洋裁店」。祖母が始めたこだわりの洋裁店を受け継いだ2代目の店主・市江。彼女が古びたミシンで作るオーダーメイド服は大人気。しかし職人スタイルを貫くため量産は出来ず、百貨店の営業・藤井からのブランド化の依頼も断り続ける。市江はなじみのお客さんだけの服を繕う日々で十分だったが…

中谷美紀さん演じた主人公の市江は凛とした佇まいと強さに、透明感と儚げさを併せ持つとても美しい人だった。洋服作りに対する自分のポリシーを絶対に曲げない頑固者で職人肌なのに、洋裁以外は何もできなかったり、チーズケーキをホールで食べちゃう豪快なとこがあったりとギャップが良い。中谷さんが演じたのがまた良い。脇を固める、三浦貴大、杉咲花ちゃん、黒木華さん、中尾ミエさん、伊武雅人さん、余貴美子さん、片桐はいりさんみんな良かった。それぞれがそれぞれで優しい雰囲気を醸し出していて映画の世界観にマッチしていた。神戸の街並み、市江の南洋裁店、片桐はいりさんの雑貨店、喫茶店、どれもおしゃれで素敵でした。

市江の生き方、そして彼女を取り巻く人々の洋服への思いを通して、服を大切に着るという奥深さを伝えてくれる作品。人が服を美しく見せるのではなく、服が人を美しく見せる。服と共に歳を重ねるって素敵。私は、服は直すくらいなら新しいものを買ってしまう派だけど、この作品を見てずっと着続けたいと思える一生モノの洋服って良いのもだな、欲しいなと素直に思えた。
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