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正しく忘れるのabokadoのレビュー・感想・評価

正しく忘れる(2011年製作の映画)
4.2
首がもげそうになるアップリンクにて鑑賞

人は生きるために忘却する、それがこの作品の謳い文句。

好きな人、友達、きょうだい、可愛がっているペット、絶対的な存在の親、そんな存在がある日「欠ける」その時は辛く喪失感に押し潰されそうになりもがくけど、時が経つにつれ無常にもそんな辛かった出来事すらも忘れ去ってしまう。 春子の家族も父の自殺により大きな喪失と虚無に襲われるのだが、5年 亡き父の分のご馳走を用意し食卓テーブルに並べる、4年、同じ過ちを繰り返さない為に家族で執拗なくらい話し合う 3年父のことは自然とは会話に出てこない。春子以外の家族はどんどん忘却していくバラバラになっていく。春子はこの時の感情を忘れまいと忘れることを怯えて、新しい生活を営もうとする自分自身に怯えて日々を過ごす「父親の自殺」という枷を引きずるがいつしかその枷は外れている。
この映画を観て記憶を思い出させる。うちも家族が幼い頃に欠けている厳密に言うと欠けかけていたものが完璧に欠けた。幼いながらに思った。 『きっとたくさんなんともならないことはあって辛いけど誰も助けてくれなくてわたしはわたしを助けてあげられないんだ』それなら楽しく無駄に前向きで居ようって。(ここまで言葉は知らなかったかもだけど。)そして大人になり今に至る。決意が無かった事みたいにしてさも当たり前かのように、結局は自分も生きるために辛い事を忘却したのだ。

自然と人は無意識の中に忘却している。誰しも明るく楽しく人生を送りたいから忘れるんだ。不条理な世の中に対して何もできないから、非力だから。正しい基準なんて人それぞれだけど自分基準を定めて生きているんだ。
ドラマティックな展開や人生を人は少なからず求めるけど、経験値が多い=忘れてきた数も多い。それは辛い体験をたくさんしているということじゃなかろうか。
つまりは月並みが幸せってことなのかもな。

強い共感を抱く。
帰り道は色々耽って昔の事とか思い出しながら歩いた。
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