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イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密のtakatoのレビュー・感想・評価

4.3



 前から是非見たかったカンバーバッチの傑作。砂粒の中に宝石が隠れているように、数え切れぬほどの凡庸な人々の中に隠れている「選ばれし少数者」の物語。

 数学者の地味な物語で、大きなドンパチがなくても最後まで没入してしまった。主人公のチューリングは、正に天才な人物らしく、一般の人々と全く噛み合わない人物である。しかし、孤高の悟りきっている天才というわけでなく、人間的にそのことに苦しみ続ける悲劇的な人物として共感できるように描けている。

 エニグマ解読のヒントが、あまりにちっぽけな偶然の出来事から始まる展開も面白いが、そこで終わらず更なる苦悩に満ちた虚実の戦いを行わなければならなくなる。さらに、戦争終結の最大の功績を成し遂げながら、その事を全く評価されることないという、正に理解されざる天才の物語として見事に幕を閉じてみせる。

 マックスウェルの理論が、期せずしてテレビやラジオを産み出したように、凡人が理解できないような基礎研究こそが人類を進歩させるのに決定的な鍵があるということは、本作を見ても明らかである。真に人類を前に進める人は、決して間違えない公明正大な聖人のような人間ではなく、一般とか普通なんて枠に囚われない人間、間違えを犯しても大いに挑戦する偉大なる挑戦者だけである。

 それにしてもチューリングがマシーンに拘り続けた理由が実に泣ける。あと、こんな悲劇が行われても性に関わる問題は、未だに汚らわしいこととして偏見や忌避にさらされているのが人間の度し難いところである。他の役者さんだと、「キングスマン」に教官役で出てきたマーク・ストロングさんが、本作でもMI6の諜報員として登場するのが良い感じ。
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