ちろる

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密のちろるのレビュー・感想・評価

4.4
本当に繊細に作られた作品でした。

アランチューリングの人生の様々なエピソードを、一つの作品にまとめるとなると、もうちょっと散らかってしまいそうですが、よくもまぁこんなまとまって作り上げることが出来たなと感心しました。

なぜに人々を救うことの出来る天才は、キリストのように迫害されるのか、なぜ人は自分とは違うマイノリティの人を憎んでしまうのか。
ただただ、人間の愚かさを見せつけられている気分にさせられました。

戦争の功労者であるにも関わらず世間から非難され、あまりにも時代を先行く天才であるがゆえに理解もされなかった彼の哀しい人生。
私達の物差しで考えると、それは不幸で哀しき人生にもみえるのですが、
もしも彼が暗号解読のための人工知能作ったのは、戦争の一刻も早い終結を願った平和主義的なとものではなく、かつて愛した数学少年をこの人工知能に重ねて、この世にもう一度、彼の魂を蘇らせたかっただっただけなのだとしたら、
もしそうだとしたら、彼は自分の業績を世間に認められないことは大したことはなく、人工知能である彼(機械)を作り出し、その人工知能の彼が国を救い、共に過ごすことが出来たことがチューリングにとってのささやかな幸せであり、これは彼でしか成し遂げられない人生をかけた愛の物語であるようにも見えました。

今更英国政府が彼の名誉を回復したところで、彼を世間から抹殺した罪は変わらないし、もし彼が生きていれば人類は今より進歩していたかもしれない。
そういう意味では、この映画は英国の大切な財産を失った愚かさへの反省と贖罪の物語でもあると思いました。

彼の人生が不幸だったのか、彼にとって少しの幸せがあったのかは今や誰も知る由も無いけれど、

「あなたが普通じゃないからこそ世界はこんなにも美しい。」
ジョーンが放ったこの台詞を、チューリングが天国で受け止めてくれてるなら少しは彼の人生は救われるのかもしれないと思いました。
ちろる

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