HamanoTakuma

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密のHamanoTakumaのネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます



一人の男のサクセスストーリーと見せかけて、「この中に2重スパイがいる!」というサスペンス・・・と見せかけての、「猥褻罪(同性愛禁止法)」という愚かしい法律に対するアンチテーゼな映画だった。

うまく言葉にできないが、心の奥まで沁みてくるタイプの映画。言い換えれば、「監督ですら言葉で説明できないことを、『映画』という一つの伝達手段」として伝えてきた、ともいえるわけで、それ故に「この映画はこうだ!」とレビューするのは愚かしいことでもある。

それを承知でレビューしてみたい。

まず時代設定。第2次大戦下のイギリスが舞台。戦争が日常になっている市民達、当然のように行われる男尊女卑(というか昔は当然だった)、今では理解できない慣習の数々・・・ワンシーンの細かい部分にさえ気を抜いていない。

俳優たちの演技。表情だけでは伝えきれないような心の機微までもが伝わってきた。

でも、そんなものは肝心の中身に比べれば些末なことだ。

主人公、アラン・チューリングの現在(戦後まもなく)と戦時下と少年時代の時間軸を行き来しながら物語は進行していく。物語は主人公が警察に「何か怪しい」と疑いをかけられる所から進行していき、主人公、アランの自白・・・というより語り、という形をとる。タイタニックやユージュアル・サスペクツと似たような形式だ。

そして語られる「エニグマ」というドイツ軍最高の暗号文にして、当時解読不可能といわれた暗号の解読に挑んだ男たちの話。

主人公は変人すぎて孤立するも、最終的には仲間の信頼を得て、戦争終結に多大なる貢献をする。しかし「世界最高の暗号を解読した」という実績は、今後起きるかもしれない戦争に備えるために秘密にされ、彼はただの一般人に戻ってしまう。

そしてたまたま発覚した彼が「同性愛者」であるという「罪」。

―――この21世紀において、ゲイであることが罪などクソくらえだが、とにかくこの時代では、そして悲しいかな、場所によっては今でも罪なのだ。その結果、彼は当時(60年代)の技術である、効くのかどうかも怪しい投薬治療を受け入れなければならなくなり、失意の後に自殺する。


結果から言えば救われない映画だった。暗号を解読しても、無敵のスーパーヒーローのようにすべての被害者をなくすことは出来ず、彼の輝かしい功績は無かったことにされ、また仮にそのままにされたとしても「ゲイである」という糞つまらない理由で彼が全てを失うことはほぼ確定しており、どうあがいても彼は・・・失意の中で消えていくしかなかった。


なのにここまで心にしみるのは何故だろうか。私にはわからない。予測すらつかない。

ただただ感じ、言語化出来ないそれを胸の中で反芻しているだけだ。エニグマのごとく暗号化されて伝えられた何かを、時間をかけて解いていくしかない。そして答えは人によって違うだろう。それこそがこの映画の見方なのかもしれない
HamanoTakuma

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