むーしゅ

砂上の法廷のむーしゅのレビュー・感想・評価

砂上の法廷(2015年製作の映画)
3.0
 Keanu Reeves主演の法廷ドラマもの。邦題「砂上の法廷」は"砂上の楼閣"から取っているのかと思います。原題の"The Whole Truth"がかなりストレートなので、意外と邦題好きです。

 敏腕弁護士のラムゼイは、友人の大物弁護士が殺害された事件の弁護人を担当することになる。容疑者として逮捕されたのは、17歳になる被害者の息子。完全黙秘を続ける少年は次第に不利になっていくが・・・という話。所謂法廷ドラマは数多くの作品が出ていますし、展開も最後は逆転して終わるんでしょう?という感じで見る前からマイナスな印象も湧きますが、本作は94分とかなり短いのもあり、さくっと見れてしまいます。重くなく、軽くなく、複雑過ぎず、簡単過ぎず、というような中間を浮いている絶妙さで、映画で見るべきかは別としてクオリティーは安定しています。

 そのひとつの要因は、米国の裁判システムを意外としっかり描いていることでしょうか。監督は「フローズン・リバー」でサンダンス映画祭グランプリを受賞して以来2作目となるCourtney Huntですが、このひと実は弁護士資格保持者で旦那さんは弁護士。その経験からか、時間の割に説明的セリフが多いのは気になりつつも、結構勉強になるんですよね。陪審員の人たちの情報を裏でこんなにも探ってるんだなぁとか、そういう見方をするのも楽しみ方の一つな気もします。

 またテーマが"嘘"なので、法廷内でのセリフの大多数は嘘ですが、真実はフラッシュバックで差し込むという対比の付け方も飽きさせないで進む一つの要因です。フラッシュバックを見ることで、この人も嘘かーというように理解していく見方ですね。嘘なのかな本当なのかな?と迷う暇を与えないうちにさっさと嘘だとばらしていくスタイルは意外と斬新でした。

 とまぁいい感じなのに唯一かつかなり気になるのは、この映画のキャッチコピーですね。正直これを見ずに映画を見た人は楽しめるけど、見た後に映画を見る人は見方が全く変わっちゃいます。途端に推理ものになってしまうんですよ。でもそういうことが耐えられるほど映画も長くないし、結果的になんか消化不良が残ってしまう。これから見ようとしている人にはなるべく何も考えずに見てほしいですね。そうすれば意外と楽しめるかも。ちなみに本作は企画・脚本が出来上がった上で、Courtney Huntが弁護士としての知見を買われ監督に抜擢された作品です。そのため間違ってはいけないのは、監督自身は推理劇として真実とは何か?つまりは物語としての結末にフォーカスするつもりは無く、あくまで法廷における判決と真実が似て非なるということを表現しようとしています。

 そういえばキーパーソンのように登場しておいて、案外雑な使われ方のGugu Mbatha-Raw演じるジャネルは、本当はどこまでわかっていたのでしょうか。嘘を見抜くのが特技なわけですから。最後は空気キャラ化していましたが、実はそこが気になっています。
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