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雪夫人絵図のhummingbirdのレビュー・感想・評価

雪夫人絵図(1950年製作の映画)
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溝口健二監督の誕生日に。戦後のリアルな生活を描いた「夜の女たち」の次の次の作品なのに、「雨月物語」「山椒太夫」に近い重厚なテイストになってる。

珍しいことに、この作品はアップも、同じ場面を別の角度から撮影したシーンもある。シーンは短め。一方で大きなセットを生かした移動撮影や長回し、美しい自然なども。過渡期の作品なのかな?

話は華族の娘に生まれた木暮実千代が、戦後に家屋敷や財産がなくなり、放蕩な夫に悩みつつ、生活を立て直そうとする

雪夫人に「強くなれ」と言う上原謙(珍しくまともなハンサム役)や久我美子は戦前からの溝口健二のキャラクター。

後半になって、書生の怒りや、柳永二郎の感情など、登場人物の意外な側面が現れるのが面白く、そこを掘り下げた話が見たかった(そうなると溝口っぽくなくなるかな?)。愛していないのに肉体的に別れられないのは、男性向けの内容で、なぜ溝口がこういう話を撮ったんだろう?と思う。

最後に一番いいところで出てくるのは田中春男。出番は2回ともロング・ショットなのに、なぜか田中春男。声でしか本人と分からない。
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