ジャック・ドゥミの処女短編。
フランス・ロワールの小さな村の老いた木靴職人の静かな日々を捉えたドキュメンタリー。
ベルリン国際映画祭: 短篇ドキュメンタリー Honorable Mention
とある秋の日。例年通り朝7:10にやってくる友人の車に乗せてもらった木靴職人は、空き地に集まる仲間たちと4人で木靴の材料となる丸太の切り出しをする。いつも遅れてやってくるという青年が自転車でのんきに登場するのが微笑ましい。
工房でひとり木靴をつくる夫の気配を感じながら家事をこなす妻。
職人の妻への愛が語られる。
二人に子供は出来なかったが、孤児を養子として育て、今は町で裁縫師として働いている彼は母と静かに編み物をしている。
妻はロワール川まで木の手押し車を押して洗濯に行っているが、老いた身には辛そうで新しい台車を春頃には買ってあげねばと思っている。
そんなある日、そろそろ危ないと聞いていた75歳の友人が亡くなる。
その通夜で静かに座る職人は、その友人の妻の悪口なども。笑
彼とのヤンチャな日々を思い出しながら、木靴づくりに精を出す職人。
そして春。町に出たついでにゴムタイヤの金属製の台車を入手。
息子には彼女が出来たようだ。
再び平和な日曜。
いつもなら息子の車で行く川だが、都合が悪いようで二人は歩いて行く。
川に釣り糸を垂れる職人と近くに座る妻。
また秋が近づいている。
いつものように朝7:10にクラクションが鳴る季節だ。
老いた夫婦があと何年この平穏な日々を繰り返すことが出来るのだろう。そんな余韻の残るラストでした。
登場人物が語ることはなく、ナレーションが状況や彼の心のうちを語ります。
使い込んだ道具たちで木靴を彫っていくシーンも見どころで、1955年のこの時間が映像として残されていることが貴重だなぁと感じます。
MUBI