むーしゅ

ヤング・アダルト・ニューヨークのむーしゅのレビュー・感想・評価

2.7
 Ben Stillerのポスターがいい感じだったので視聴。ニューヨークってつけておけば何かおしゃれ風になると思ったのか、結果よくわからなくなっている邦題にも注目。全体通してアート映画とコメディ映画を迷走している感じだったので、そういう意味ではあっているのかも。とりあえずBen Stillerは演技がもうコメディに染まってしまってますね。

 親友夫婦が子供を産んだことで彼らとの価値観の違いを感じ始めたジョシュとコーネリアは、偶然出会ったジェイミーとダービーに惹かれ交流を深めていく。時代の波に乗り続けようとする中年夫婦だったのに、古いものを愛する若年夫婦に影響されていくところが面白い。なんて言ったってジェイミーとダービーにとっては古さは逆に新鮮さでもあるけれど、ジョシュとコーネリアにとってはただの回顧でしかないんだから、気づいていないけど。全編ニューヨークロケにて撮影したそうで、若い世代のニューヨーカーの暮らしを垣間見ているようなリアルさは良かったです。

 とはいえ最初こそそんな2組の夫婦のジェネレーションギャップがテーマだったと思うんですが、途中からはそんな方向性をまったく感じさせない展開に突入していきます。まぁよく考えれば最初3分でこの映画のすべてが語られていたのかもしれないです。「棟梁ソルネス」 の第1部後半でソルネスの前にヒルダが10年ぶりに現れたシーンからの引用である冒頭。ちなみに 「棟梁ソルネス」は建築家のソルネスの周りの人間関係、特に恋愛や嫉妬が描かれている戯曲で、ソルネス自身はその元で働くラグナーの才能に嫉妬し独り立ちを邪魔しており、このあたり本作のジョシュと近いです。冒頭で引用された部分では"Open the door?"と若者と向き合った方が良いことを示唆して終わりますが、重要なのはこの後のコーネリアが話す"三匹のこぶた"です。コーネリアもジョシュも三匹のこぶたを話し始めるも途中でわからなくなり、狼に家が吹き飛ばされてしまうところで止めてしまいます。この冒頭3分がこの映画のまさにストーリーですね。若者に向き合って扉を開けて色々と面倒を見ていたら、その若者が実は狼で吹き飛ばされました、というね。二人が結末まで覚えていれば、もしかしたらもっと良い展開になっていたかもしれません。

 さてこの狼さんことAdam Driverですが、何ていうアクの強さですかね。この映画の翌年に「スター・ウォーズ」シリーズのカイロ・レン役でブレイクするわけですが、絶対正統派な役が出来ない感じは何だろうか。この映画でも正直最初に出てきた時から、なんかこいつ隠しているわ、みたいな。顔と声、話し方だけで、申し訳ないけど好きになれないこの感じ。ジェイミーとはまさにそういった男なのではまり役でしたが、とにかくアクが強くて途中ちょっとお腹いっぱい感でした。
むーしゅ

むーしゅ