教授

ヤング・アダルト・ニューヨークの教授のレビュー・感想・評価

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長渕剛主演「太陽の家」の心的外傷のダメージが消えず。非常に疲れ果て、しばらくは傑作しか観ないと、決めてからの一本。
筋肉ムキムキで、自身の精度を上げず「力」でのみ解決を求める「おじさんの末路」を観てグッタリしていた矢先の、本作は傑作。

個人的なことを、このレビューには書く。

本作のベン・スティラーは衒いもなく言えば、僕自身である。
「表現活動」なんてもののにうつつを抜かし。若さも失い。表現衝動なんていう勢いもなく。社会の中で自立しているわけでもなく意固地に生きている。
ただ自らの意地と尊厳が結びついているのに、頑固に自分の流儀だけは守り続けている。といういつまでも若者気分でいる僕自身にとっての、「40代の到来」と、ベン・スティラーが重なり過ぎる。

若くて、エネルギーに溢れてセンスに長けているアダム・ドライバーに「憧れてる」なんて言われてホイホイ影響されてしまう…なんてところまで、僕自身を投影してしまう。

そして、映画と同じように。「若いだけ」だから悪魔でもなく、ただただ成功主義で。自分の腕で成り上がること、のために策を巡らせている。
…そういうことを、なかなか気付けない。見抜けない。
まったく同じような体験をよくする。
そしてまた、同世代の友人たちとは疎遠になりがち…である。

その中でそれでも!それでも!
という想いは呪いのように今もつきまとってはくるが…僕もまた、若い人から見ればもうとっくに「老人である」という意識のもとで、自分の創作に対して改めて向かい合いたいと、思わせてくれた。

…そういう意味で「中年の危機」を描いた映画であるが、傑作に違いないし。
この映画で描いているような着眼点と、まさにドンピシャな世代観に打ちのめされた。
もう…毎日が充実してる、ということはできない。

残酷で厳しいことではあるけれど。
本作のおかげで、思えるようになれた。
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