乙郎さん

人妻の乙郎さんのレビュー・感想・評価

人妻(2013年製作の映画)
4.0
思わず製作年を確認したくなるようなフィルムの感触は否応でも90年代ピンク映画を連想させるし、その一種のノスタルジアの中で描かれるのが女性の自立というのがたまらない。ユーモアも含めて。
内容ははっきり言ってしまえばデビュー作『押入れ 味見したい人妻たち』(2003)のアレンジ違いであり、10年越しのリベンジといってもよい。
主人公(七海なな)の夫の不倫シーンでの電話プレイが、のちに七海ななが吉岡睦雄を匿った時の展開との対比になっている。
基本的には屋内で物語が展開されるのだけれども、七海の家に警官が訪ねてくるシーンでの顔に影がかかる具合、真上から捉えた絡みのカメラの揺れ方など、見どころが多い。ただ、もう少しフィックス多くてもよかった。
後半は屋外のシーンも増えるが、これぞ「映画」とばかりにロングショットを出してくる。これは観て確認してほしいので詳細は書かないが、ユーモラスにも映し、エモーショナルにも映る。工場で表現される閉塞。煙突の煙からラストのタバコに繋がる。
10年前の作品と比べると、夫の造形などから顕著だが。明確に「主人公にとってどうしようもない現実」に対して、まず諦念をもって受け入れているし、「救い」だってあれでは救われない。ただ、不思議と観後感は爽やか。良かったです。
乙郎さん

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