小津というよりジャック・タチ。確かに、トイレ綺麗すぎだろとか、言いたいことはある。それでもこの映画を嫌いになれない。まず、日常で繰り返される動作がスクリーンで再現されたときの気持ちよさ、これはさすがヴェンダースといった感じで、それだけで充分楽しめる。さて、平山（役所広司）だ。彼は東京を見守ってきた道祖神にも思えるし、セゾン文化の成れの果てという気もする。
いずれにせよ、ある種のサブカル的に理想な暮しではあるわけで、恐らくは自分の人生に不要なものを切り捨てていった末に残ったものなのだなと思わせられる。ただ、時代の移り変わりと、そこで変わらないはずの生活もいずれは変わってしまうのだろうという予感はある。もし平山が加齢で働けなくなったら、というのも感じさせるし。私はそこに誠実さを見てとった。面白かったです。
