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シチリア!のsonozyのレビュー・感想・評価

シチリア!(1999年製作の映画)
4.0
シチリア出身の作家ヴィットリーニの長編小説『シチリアでの会話』の一部分を、序曲と6つの章に再構成したという ストローブ=ユイレ監督作。

主人公はアメリカから15年ぶりにイタリアに戻ってきたシルヴェストロという男。
明確に分かれているわけではありませんが、以下の6つの章で、彼が港、列車の中で出会う男たちや、田舎に暮らす母、刃物研ぎのおっちゃんと出会い語るお話。

1.港でオレンジ売りの男と対話するシルヴェストロ。アメリカとシチリアの朝食・食の違いや、オレンジがまったく売れないと語る男の嘆き。シルヴェストロはジャケ写の後ろ姿で男と対面しない不思議な映像。

2.列車の窓際で立ち話するスーツを着た二人の刑事らしきシチリア男の後ろ姿。(シルヴェストロとの接点はなし)

3.その列車の6人掛けコンパートメントで向かいに座る3人の男と対面するシルヴェストロ。1人の成功者らしき男が、外の二人の刑事が臭い(笑)という話しから、自身について自慢げに語ったり。

4.カターニア駅で3人は下車し、乗ってきた1人の髭男と向き合うシルヴェストロ。髭男をバリトンの美声だと褒め何故歌を仕事にしなかったのかなど問う。

5.故郷の町シラクーサ(シチリア南東部)に到着。母を訪ねるシルヴェストロ。母が焼いたニシンとメロン。少年時代の想い出、貧しかった食生活(カタツムリや野生の草)、母自慢の祖父、女のために出ていった(追い出された)父、母の浮気など。父に関する意見のぶつかり合いも。

6.自転車を停めた刃物研ぎのおっちゃん(ペダル漕ぐと砥石が回って刃物を研ぐ方式)と対面するシルヴェストロ。研ぐ物がないと嘆く男に持っていたナイフを研いでもらう。支払った小銭をパン代・ワイン代・税金と3つに分けて保管するおっちゃん(笑)。
そして突然始まる、単語を復数言い合う掛け合い。
光、影、寒さ、熱、喜び!希望、慈善!
幼少期、青年期、老年期!男性、子供、女性!
記憶、幻想!パンとワイン!・・・etc
最後はおっちゃんが武器類の単語を並べ、挨拶し見つめ合う二人。

途中で人物をフリーズさせた長めのショットや、故郷の遠景を捉えるカメラのパンの長めの反復ショット、突然の無音などもユニークで、他に類を見ない不思議な魅力の作品です。
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