Kumonohate

美女と野獣のKumonohateのレビュー・感想・評価

美女と野獣(2014年製作の映画)
1.5
ディズニー版を見ていないが、1946年のジャン・コクトー版はお気に入り。対して本作は、仏造って魂入れず。いや、それ以上。かなりお粗末な出来。

とにかく、CGの驚かし映像とかもう要らないので、ドラマをキチンと作って欲しい。まずは、ベラが野獣を好きになる理由や過程をちゃんと描いて欲しい。なにはなくとも、それあってこその「美女と野獣」なのだから。にも拘わらず、こともあろうに、かつて野獣が人間だった過去を、まだ愛が芽生える前のベラに教えちゃうなんて。かかる暴挙により、「外見の美醜ではなく心の美しさに惚れてこそ真実の愛」、という本作のテーマは早々に根幹から崩壊。野獣が元は人間の王子だったことを予め知ってしまったことで、ベラは、「大金持ちだし、贅沢三昧させてくれるし、ホンモノのケダモノじゃ無いんだったら我慢すっか」と結婚に踏み切る打算女になりさがってしまっている。野獣の紳士ぶりや高潔さや苦しみも描かれていないため、なお一層そう見える。

他にも、ベラの兄弟姉妹たちが一体どういう奴らなのかさっぱりわからないなど、本作の人間描写不足は全体的に甚だしい。一方で、巨大石像が動き出して悪者に襲いかかったり、木の根っこがギュンギュン伸びて城を覆い尽くしたりと、VFXはお祭り騒ぎ。つまり、映像効果に力を入れ過ぎる反面、肝心のドラマ部分が全くおろそかになってしまっている。まさに、ドラマそっちのけでCGにやたら力を注ぐというハリウッド型VFX偏重病。こいつが遂にフランスにも伝染したとなると、これはパンデミックの前兆か。危機的状況が起こりつつあるんじゃないかと戦慄する。

それでも、ベラがやたらと気の強い女性であることと、あれなら野獣のままの方がマシだったのでは?と思うほど人間体の王子がイケてないことと、矢で射殺された鹿(日頃は人間の美女に化けていた)が死ぬ間際にイキナリまっぱ美女の姿になったこと(死ぬときは本来の姿に戻るのが普通なのに、何故、化けている方の姿になるのかは謎)は、フランス映画っぽくて良かった。
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