梅田

鬼の詩の梅田のレビュー・感想・評価

鬼の詩(1975年製作の映画)
3.8
明治末期、天然痘やコレラがまだ猛威を振るっていた頃、上方落語の世界。
主人公・桂馬喬が目指すのは「高み」ではなく「底」である。妻に「落ちるところまで落ちること」を肯定され、そしてその妻を失って(=先に底に行かれて)しまった馬喬は、ただひたすらどん底を目指して芸事を極めようとする。これはおそらく狂気を描いた映画なのだと思うが、雑な言い方をしてしまうと狂気というよりただ一言「シュール」だ。観客の方を向いているのに馬喬の目には何も写っていないように見えるし、観客がなぜこんな芸で笑っているのかもわからない。圧倒的な置いてけぼり感の中で、あまりにも醜い鬼の顔だけが暗闇に浮かんでいる。シュールすぎる。
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