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夏をゆく人々のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

夏をゆく人々(2014年製作の映画)
4.5
【ロルヴァケル監督を啓蒙する】
※本記事は、2014年にウィーンで観た際の感想です。アリーチェ・ロルヴァケル監督最新作『幸福なラザロ』公開に併せて転載します。

子ども時代、テレビの世界に
憧れたことはありませんか?

大人になると広告だらけ、プロパガンダ、汚い世界しか想像できなくなるが、このカンヌ映画祭グランプリ作「LE MERAVIGLIE」を観ると、あの華やかで楽しそうなテレビの世界に惚れた時代を思い出すであろう。

閉鎖的な家父長制のもと、学校に通わせてもらえず、家業である蜂蜜製造を手伝わされている子どもたちの前にテレビのロケ団がやってくる。

彼らは田舎のエキゾチックな特技を持った人を探しており、ビラを配り始める。

初めて目の当たりにする華やかな世界に長女は釘付け!でも父は許してくれない。
男女差別、姉妹差別に苦しみながら少女はテレビ参加を目指す…

フィルム撮影、そして子ども目線の話、なんかヴィクトル・エリセやアッバス・キアロスタミのような、ほのぼの感と社会批評がある。

この作品は「夢を掴む過程もの」というジャンル映画に、絶妙な「差別批判」を織り交ぜる。キーとなるのは、突如家にホームステイし始める男の子。

施設から預かったその少年は、一切話さない、しかも触られることを極度に嫌う奴。

そんな奴が、蜂蜜瓶詰め作業を手抜きしているのに、父は長女を怒る。長女だから、妹たちの面倒もみないといけない。そんなツライ状況で夢すら叶えてもらえない。でも、その状況を母は熟知している…もう泣けてくるねーブンブンも長男だけに彼女の気持ちよく分かる。

いいとこは周りに取られ、貧乏くじばかり引かされる感じ。そりゃ、人生に一度の
チャンスに特技がなくてもテレビにでようとするわけだ。このフツーの女の子が大舞台に殴り込む滑稽さは「リトル・ミス・サンシャイン」のよう。

日本でもまだまだ女性の力が男性と対等のいきに達していない。女性同士でも男性にものを言って共通の差別を撤廃させることは頻繁には起きてないように見える。

だからこそ、この純粋で笑える話なのに次第に泣けてくるのだ。しかも、最後には見事に長女が大人に十歩近づいてくれる。女性監督ならではの目線で完成させた、女性の為の映画。もちろん、男性も観るべし!

P.S.この映画は、イタリア語音声、ドイツ語字幕で観ています。イタリア語もドイツ語もできないはずなのに大学2年生のブンブン、ここまで書いているとはちょっと衝撃的です。
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