テトラ

Mommy/マミーのテトラのレビュー・感想・評価

Mommy/マミー(2014年製作の映画)
4.5
ADHDの影響なのか、直情的で衝動的な性質のスティーブ。
怒りの感情をやり過ごすことができず、時には母親にさえ暴力を振るってしまう一方で、母からの愛情を真正面から全力で受け取るし、母に対する愛情をストレートすぎるぐらいに全力で表現できてしまう。

だが、その純粋さが生きづらさにも繋がってしまう。
セクシャルマイノリティーであるドラン監督自身の苦悩も織り込まれているんだろう。

カイラの存在がまた良い。
自分の感情を素直に言葉にし、言ってはいけないことまで言ってしまうスティーブ。
吃音で言いたいこともまともに言葉にできず、言わなければいけないことすら言えないカイラ。
対照的な2人が心を通わせていくのがとても印象的。

『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』や『たかが世界の終わり』でも感じたが、ドラン監督は死というものに対してある種の希望を持って描いているように見える。
時にそれは死への欲動(タナトス)に見えるほど。
心配になると同時に、この感性が彼を特別な映画監督の1人にしているのかなとも思う。

クライマックス前の、そうであってほしかった未来、そうできたかもしれない未来の白昼夢は観ていて本当に辛くなる。
久しぶりに本作を観直して、意味は全く異なるが『ラ・ラ・ランド』のラストを想起した。
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