テトラ

ジョン・F・ドノヴァンの死と生のテトラのレビュー・感想・評価

5.0
グザヴィエドラン監督が自身を重ねて描いているであろうルパートが天才すぎて感情移入しにくく、特に憧れの俳優(ジョン)のドラマを観ながら異常に興奮した状態で饒舌に感情を説明的に言葉にしてしまうところなど、下手すると映画表現として稚拙で過剰な演出にも見えてしまう部分が多かった。

ただ、この映画は個人的にめちゃくちゃ刺さった。
それが母親と息子の関係だ。
母親は自分の息子がいくつになっても子どもでいてほしいという願望を潜在的に持っていると思う。
時としてそれは、息子にとっていつまで経っても自分を子ども扱いして認めようとしない、理解しようとしない存在として母親を敵視させてしまう。
もちろんそうじゃない家庭もたくさんあると思うが、自分はまさにそう感じていた。

だが、ある程度大人になった後で、なにかのきっかけで、実は母親は自分のことをちゃんと見ていて理解していた、敵ではなかったと気づく瞬間が来る。
そういう経験をしたことがある人は割といるんじゃないだろうか。
そういう人には、ロンドンでのルパートと母親の和解のシーンは本当に刺さると思う。
近年観た映画の中で一番泣いたかもしれない。

いろいろなテーマが重層的に描かれている本作だが、個人的には親子の物語として本当に素晴らしい映画だと感じた。
テトラ

テトラ