おたしん

あの日の声を探してのおたしんのネタバレレビュー・内容・結末

あの日の声を探して(2014年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

戦争がどれほど酷くて人を悲しませて無駄なものなのかが改めて分かる。
必要のない死を生みすぎなんだよ。
どちらも間違ってるけど手段がないからこうなるしかないのか。
争っても恨み憎しみだけが残って良いこと何もないのに。

目の前で両親が殺される。
大人でさえトラウマになるのに9歳の少年には残酷すぎる。
声を失うのも分かるしそれでも弟を最善の方法で守り自分の足で生き抜こうとした彼の行動は勇敢だ。
他人を警戒するのももちろんだし増してや銃を持った大人なんて。
怯える表情と「来ないで」と訴えかけるような目に言葉が出なかった。
いずれ話すことになるんだろうけど壮絶な体験をした少年が両親のことを質問されているのは見ていられなかった。
絵を描くときに人間を塗り潰そうとするシーンで泣いてしまった。

一方でロシア軍に強制入隊させられた青年。
友達のタバコを持っていただけで過酷な日々を送ることになる。
戦争には縁のない人生を送る優しい青年だったはずなのに運が悪すぎる。
虐待紛いなことをされる生活。
自殺した隊員の血を掃除し銃を見つめながら涙を流すシーンが忘れられない。
目は虚ろで感情を失っていくように見えた。
クソみたいな上官ばっかりだと思ったけど彼らも同じことをされて同じような人間になったんだろう。
反吐が出る文化だ。
意思のない銃殺を経験して人間性も壊れていく。
そのあとの会話は1ミリも笑えなかったしあんなので笑顔になる人生何も羨ましくない。
ロシア軍の人間としては成長していったけど優しい青年の面影は皆無だった。

ハジは少しずつ回復してホッとした。
トラウマは消えずとも前に進まなければならない。
キャロルに全てを話すシーンは涙が止まらなかった。
無垢な少年にこんな経験は酷すぎるよ。
明るいダンスのシーンすら泣きそうになった。

ハジが姉弟との再会を迎える感動的なストーリーなのかと思ったけどそれは違った。
想像していなかった衝撃のラスト。
そうやって2つの話がつながるのは1番望んでいなかった。

タイミング悪くタバコを手にしてしまった少年が強制入隊させられて地獄を味わいながら感情のない兵器になってテロリストだとか何とか理由をつけて夫婦を殺し家族を壊し9歳の少年に最悪のトラウマを与えるのが戦争。
望んでいない者同士が上の命令で戦争させられているとしか思えない。
無意味なのに犠牲者が多すぎる。
上の人間たちで勝手にやって民間人を巻き込まないでくれ。

キャロルのスピーチのとき聞いてる側が他人事すぎて引いてしまった。
自分が何をしているわけでもないから何も言う権利ないけど冷たい世界だ。
おたしん

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