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あの日の声を探してのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

あの日の声を探して(2014年製作の映画)
2.0
[] 40点

2014年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。ミシェル・アザナヴィシウス長編五作目。この年のコンペはSCREENの星取で3.0点以上を連発していたのだが、本作品はぶっちぎりの最下位(1.2点)だった。フレッド・ジンネマン『山河遥かなり(The Search)』のリメイクらしい。舞台は1999年、第二次チェチェン紛争によって荒廃したチェチェン共和国。四人の視点人物の目線から悲惨な紛争を解剖していく。一人目はハジ、目の前で両親を殺された彼は言葉を発せなくなり、幼い弟を道中に置いて一人国境へ向かう。二人目は逃げてきたハジを保護するフランス人NGO職員キャロル、目の前で起こる紛争に有効な手を打てずに苦悩する。三人目は大麻所持で逮捕されて前線に送られたロシア人青年コリア、彼は軍の訓練で虐待されて、殺戮マシーンになっていく。四人目はハジの姉ライサ、彼女は一人で戦地に残り、救出した赤子を抱えながらハジを探す。ここまででお分かりのように、キャロル篇とコリア篇はマジで要らない。アザナヴィシウスの脚本は疑いようもなく誠実ではあるのだが、耐え難い凡庸さと西欧中心的な目線には少々呆れるし、ドラマ的な演出に重きを置きすぎて繊細さを欠いている。特にキャロルがハジと絵を描くシーンとか、親が死んでるのがほぼ明らかなのに家と人間を描いて渡すという無神経さには呆れを通り越して笑ってしまった。彼女のある種の偽善を糾弾する意図はなさそうなのがまたなんとも。ラストで彼女が流す涙は西欧の観客を想定してるっぽくてなんだかなあと。映画自体は135分もあるのにだいぶ鈍重で、悪いことにそれは遅々として進まない終戦への道(つまり現実)とは全くリンクしていない。ただ、ハジだけは素晴らしい。ビージーズの曲に合わせて踊るとことか特に。
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