父母は銃殺され、残された赤ん坊の弟を抱え逃げるチェチェン難民の小さな少年"ハジ"
EUの人権委員会としてチェチェン紛争の人道的支援をするフランス人女性"キャロル"
そして補導され警察によって軍に入隊させられたロシア人青年"コーリャ"
チェチェン紛争を背景に、国籍も立場も違う3人の視点から、紛争の現実、戦争の哀しさを描く映画。
上映時間の半分以上、台詞のないハジ。
彼の目を見ているだけで、その小さな身体に抱える辛さ、哀しみ、やるせなさが感じられる。
まだ両親に甘えたい頃だろうに、弟を捨てたというとてつもない罪の意識に苛まれ、いつ殺されるか連れ去られるかわからない恐怖に怯え、
それでも家族を思い生き続ける。
そんなハジを衝動的に保護するキャロル。
頭では理解していても、心がおいつかず時に相手を傷つけてしまう。
理想と現実の狭間で、仕事とプライベートとの折り合いをもつける難しさ。
これもまた同じ世界にある現実。
そこに突如挟み込まれるコーリャのストーリー。
一瞬頭が混乱するが、彼のストーリーなしにこの紛争の虚しさは語れない。
かれがいかにしてロシア兵となり、紛争の当事者となり戦地に赴くか。
明らかな一般人をテロリストと嘲笑い、次々に殺戮が行われるチェチェン人のすむ村。
そしてそこに残されていた、少しの良心。
ハジが生きる理由。
ロシア兵の話から、映画「プライベート・ライアン」が公開された後の話とわかる。
これは昔々の話ではなく、現代の話。
チェチェンだけでなく、各地で起こりうる事実。
静かにも強く深いところから、訴えてくる。