松井の天井直撃ホームラン

サンドラの週末の松井の天井直撃ホームランのネタバレレビュー・内容・結末

サンドラの週末(2014年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

☆☆☆★★★

完全ネタバレしているので注意して下さいm(__)m

映画冒頭で同僚に促され、社長と対面するサンドラだが。緊張してしまったからなのか、彼女は自分の意見を社長に伝える事が全く出来ない。

同僚のおかげで、再投票の約束を取り付けるのだが。自分の為に職場の雰囲気が悪くなる事や、1人1人の生活事情等は同僚だけに知っている為か、なかなか重い腰が上がらない。

何とか同僚達に会いに行く週末が始まるのだが。ドア越しや道端で、同僚達と顔を会わす度に何となくバツが悪く、お互いに戸惑いの表情を浮かべてしまう。

金を取るか、情けを取るかの決断を迫られる。

それでも何人かは自分の生活事情をハッキリと口にする。
それには彼女も理解を示す。
そして何人かは、自分の意見をしっかりと口にしなかった事を気にしてか、後悔の念を口にする。

これがハリウッド映画なら。支持を取り付けた時には、同行している旦那に喜びの余り抱き着く等の行動を取るだろうし。反対の立場を言われた時には車の中で泣き:叫び:ドア等を叩く等、激しく喜怒哀楽な表情を描く事だろう。

しかし、この作品がハリウッド映画と決定的に違うのは。その様なオーバーな仕草は一切させず、支持を取り付けた時にはちょっとした微笑みを。
駄目だった時には、車の中で背中越しにうなだれる彼女を。
家族で外食の時には、「子供の前では泣けない」と、そっと店の裏で泣いてしまったり…と。
とてもリアルな人間臭さに溢れている。
いやそれどころか、気持ちが萎えてしまったからなのか?淡々と自殺をし始めたりするサンドラ。

ここまで来ると、もしも自分が同僚役だったならどうゆう態度を取るのだろうか?と考え込んでしまう。

正直に言うと、映画当初は「現実にこんな同僚がいたらちょっとウザいなあ〜」と思いながら観てはいたのですが。映画の後半になると、段々と彼女が落ち込む姿の背中を寧ろ「押してあげないと!」との感情移入をさせられてしまっている自分に気付かされる。

このダルデンヌ兄弟の演出力。

それでも結果は出る。
彼女に促されたからか?自分の意見をハッキリと口に出せた同僚達に、離婚に踏み切れずに悶々としていた女性の同僚。
みんな晴々とした顔でサンドラを部屋に迎い入れる。
そんな同僚達に感謝の念を伝えるサンドラ。
だから経営者としての決断をする社長に対して、サンドラは映画の冒頭とは打って変わり、堂々と自分の意見を口に出す。

映画の始めには愚図つき、後ろ向きな考え方だったサンドラだったのだが。今はもう前を向き以前とは違う彼女の姿があった。

だから彼女は一言だけ結果を家族に告げる。

「わたしも頑張ったでしよ!」

(2015年5月28日 ヒューマントラストシネマ有楽町/スクリーン1)