あきしげ

アメリカン・スナイパーのあきしげのレビュー・感想・評価

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
3.5
伝説になった男はただ守りたかった。

良かった点。

・クリント・イーストウッド監督の演出
・ブラッドリー・クーパーの演技
・反戦と好戦を超越した構成

悪かった点。

・PTSDの描写が足りない
・クリス・カイルの人となりが分からない

アメリカ本土で物議をかもし出した作品。
アカデミー賞で6部門にノミネートされた。
クリント・イーストウッドが監督を務めている。
戦争映画として最高の興行収入を達成する。

保守派とリベラル派が勝手に論争を繰り広げる。
それを残念に思うクリント・イーストウッド監督。

戦争映画というのは常にデリケートな問題を抱えている。
アクション超大作にしてしまえば関係ないが。
ドラマ性の強い戦争映画は必ず何かと話題になる。
それが大物監督が撮っているから尚更だ。

本作は反戦でもないし、好戦でもない戦争映画。
あくまで一人の兵士を描いているだけの映画。
決して複雑な物語ではなく、戦場に行った男の半生を描く。

一方ではクリス・カイルを英雄視する。
一方ではPTSDに悩む姿を描く。

祖国の為、家族の為に戦場へ赴くクリス・カイル。
しかし、彼の心は確実に蝕まれていくのです。

帰還兵の苦悩を描く作品に『ランボー』があります。
一作目は傑作とも言っていいほどドラマ性がある。
それと比べると本作は苦悩の描写が少し足りない気がする。
もっと苦悩して周囲に影響を及ぼす描写が欲しかった。

それにしても、クリント・イーストウッド監督の上手さが光る。
本作には一切の音楽がなく、常に緊張感を与えてくれる。
これは主人公の心情と同調させる効果をもたらす。
決して心が安らげる時間などクリス・カイルにはない。

何より監督の考えを押しつけていない。
いつもそうだが、本作でも各々受け止めるような構成。
だからこそ論争を巻き起こしていたのでしょう。

クリント・イーストウッド監督は素材選びが上手いし、演出も上手い。
ダーティハリーが名監督になるのは誰が予想できたのだろうか。
あきしげ

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